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副業来月「解禁」 安全網に不安 各社で残業ゼロ、足すと過労死ライン

経済

2019年3月9日 朝刊

 働き方改革関連法が来月1日に施行し、政府が推進する働く人の副業・兼業が本格的に解禁される。だが、過重労働が懸念されるのに副業・兼業に対応した労災保険や雇用保険などの安全網は不備なままだ。このままでは過労死などの労災認定がなされないのではと危惧する声があり、専門家は「命綱なしに過重労働の危険にさらされるようなもの」と批判している。 (編集委員・久原穏)

 政府は一昨年三月にまとめた「働き方改革実行計画」で、副業・兼業について(1)スキルアップや起業の手段となる(2)第二の人生の準備に有効−などとして推奨。多くの企業が「長時間労働を助長する」などの理由で禁止する中、政府は解禁にかじを切った。

 最も危惧されるのは労災認定のルールだ。現行の労災保険や雇用保険は、終身雇用を前提としており、複数の企業で働く人の労災をどう認定するかは法律の定めがない。

 たとえばA社で週四十時間、B社で週二十五時間働く人の場合、月の労働時間は計二百六十時間になる。法定労働時間百六十時間を除いた時間外労働は百時間に達し、過労死ラインだ。

 一つの企業なら労災認定対象となるが、現行のルール(労働者災害補償保険法)は異なる企業の労働時間は合算しない。A社、B社それぞれでは法定時間内(残業時間ゼロ)なので過労で倒れても労災にならない。

 厚労省は、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の労災保険部会や検討会で解決策の議論を重ねてきた。だが、本業と副業の労働時間や賃金の合算を求める労働側と、「過度な企業責任になりかねない」として合算に反対する一部経営側の意見が対立したままだ。

 過重労働問題に詳しい横浜法律事務所の笠置裕亮(かさぎゆうすけ)弁護士は「厚労省は指針で企業に副業先の労働時間の把握を求めている。だが、努力規定でなく法律で義務化すべきだ。このまま政府が副業の旗を振るのは、命綱なしに過重な労働を助長することになる」と指摘している。

<副業・兼業の解禁> 副業を禁止する法規制はないが、厚生労働省が示す「モデル就業規則」が実質的な歯止め役となってきた。多くの企業はこのモデルをベースに就業規則を作成している。厚労省は2018年1月に改訂モデルを公表し、「許可なく他の会社等の業務に従事しない」という項目を削除。「勤務時間外に他の会社等の業務に従事できる」を加えて副業奨励に転じた。

 

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