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障害者雇用 国機関8割で水増し 3460人

政治

2018年8月28日 14時05分

関係閣僚会議で発言する菅官房長官(右手前から2人目)。右は加藤厚労相=28日午前、首相官邸で(小平哲章撮影)

 中央省庁が雇用する障害者数を水増ししていた問題で、厚生労働省は二十八日、国の行政機関の約八割に当たる二十七機関で水増しがあったとの調査結果を公表した。昨年十二月に国が発表した雇用障害者約六千九百人のうち、不正に水増ししたのは三千四百六十人に上り、国の雇用率は2・49%から1・19%に低下した。「共生社会」を推進するはずの国が、法定雇用率(昨年2・3%)に遠く及ばない実態が浮かび上がった。

 菅義偉(すがよしひで)官房長官は記者会見で「障害者雇用の場の拡大を民間に率先する立場として重く受け止めており、深くおわびする」と謝罪。水増しが行われるようになった理由や詳しい経過は明らかになっておらず、国は弁護士を含む第三者検証チームを立ち上げ、実態調査を続ける。

 調査結果は、厚労省がこの日午前の関係閣僚会議で説明した。職員数が少ないため、障害者の雇用義務が生じない復興庁を除く国の三十三機関が調査対象。その結果、障害者雇用率が0%台に下落した機関は十七に上った。水増し人数が最も多かったのは国税庁で千二十二人。国土交通省の六百三人、法務省の五百三十九人が続いた。

 水増しの判明は、財務省が今年五月十一日、障害者の定義について厚労省に問い合わせたことがきっかけだったことも判明。国のガイドラインに合わない人が計算に含まれている可能性が浮上したため、厚労省が六月に他の省庁にも再調査を依頼したという。

 厚労省はガイドラインで雇用率に含められる障害者について原則、身障者手帳や知的障害者の療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人などとしているが、多くが従っていなかったとみられる。

 厚労省は障害者雇用促進法に基づき、毎年六月一日現在の障害者雇用率を報告するよう、公的機関や四五・五人以上の従業員がいる民間企業に求めている。今年の法定雇用率は公的機関で2・5%、企業で2・2%。企業は法定雇用率を下回った場合、納付金を求められ、虚偽報告した場合の罰則もあるが、公的機関は対象になっていない。

 障害者雇用率を巡っては自治体でも厚労省ガイドラインに合わない集計が相次ぎ発覚しており、今後、全国的な再調査が行われる。

◆共生社会の理念どこに

<解説> 障害者雇用の水増し問題で、政府に対する根深い不信感が広がっている。中央省庁ぐるみと受け取られかねない不正が長期間、放置されてきたからだ。「なぜ、気づかなかったのか」。障害者だけでなく、多くの国民が抱いている疑問だろう。

 身体障害者の雇用が義務化されたのは四十二年前。障害があるというだけで就職差別が平然と行われていた時代だ。雇用を確保するだけでなく、障害者の社会参加を促し、共生社会を実現することを目標にしている。その旗振り役である政府が、自らの不正でその機会を奪った責任は重い。

 「障害者はあてにならないことを前提にしているのではないか。差別があると思わざるを得ない」。視覚に障害のある日本障害者協議会の藤井克徳代表は今月二十一日の野党ヒアリングで、中央省庁の担当者に直接、指摘した。

 同じくヒアリングに出席した、下半身に障害のあるDPI(障害者インターナショナル)日本会議の佐藤聡事務局長は「障害者を含めて第三者委員会を設置して、実態解明を進めてほしい」と中央省庁の担当者に迫った。二人に共通しているのは、政府への不信だ。

 安倍晋三首相は二〇二〇年の東京五輪・パラリンピックに向けて「共生社会実現を、東京大会最大のレガシー(遺産)にしたい」と表明している。

 なぜ不正が放置されてきたのかを解明し障害者の不信を払拭(ふっしょく)できなければ共生社会どころではない。政府への不信が社会への不信となり、障害者の社会参加を妨げることになりかねない。 (城島建治)

<障害者雇用> 障害者雇用促進法は働く人のうち一定割合以上を障害者とすることを義務付けている。この割合は法定雇用率と呼ばれ、今年4月から0・2ポイント引き上げられ、国や地方自治体は2・5%、民間企業は2・2%になった。毎年6月時点の達成状況を厚生労働省に報告する義務がある。達成できなかった場合、一定規模以上の企業は不足1人につき月額4万円または5万円を納付金として徴収されるが、国や自治体は徴収されない。納付金を原資に障害者を多く雇用している企業には「調整金」と呼ばれる助成金が支給される。

(東京新聞)

 

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