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続く通貨下落 生活圧迫 トルコ 米制裁受け1カ月

国際

2018年9月1日 朝刊

 【カイロ=奥田哲平】米国人牧師の拘束問題を発端にトランプ米政権がトルコに経済制裁を実施してから一日で一カ月。年初比40%下落した通貨リラは一ドル=六リラ台が続き、持ち直す兆しはない。エルドアン政権は愛国心をあおって国民の支持をつなぎ留めるが、通貨安とインフレが長期化すれば、市民生活や企業経営を圧迫するのは確実だ。

 「主権を脅かす攻撃が最近ますます激化しているが、私たちの理想と目標をくじくことは決してない」。エルドアン大統領は三十日、首都アンカラにある建国の父ケマル・アタチュルク廟(びょう)でこう力説した。

 この日は、第一次大戦でオスマン帝国が敗北して西洋列強に分割されかけたトルコが、侵攻したギリシャ軍を破り、独立につながった戦勝記念日。制裁で圧力をかける米国に一切譲歩しないという強硬姿勢をあらためて示した。対米関係は膠着(こうちゃく)状態に陥っている。

 エルドアン氏が根強い支持を維持するのは、愛国心を喚起し、国内外に敵を設定する政治手法にある。今回の通貨危機でも反米感情をあおり、米国製品のボイコットを呼び掛ける。市民にはエルドアン氏の求めに応じて米ドルを両替してリラを買い支える動きが広がり、求心力を保っている。

 ただ、通貨下落はトルコ経済に深刻な打撃を与えつつあり、愛国心だけで乗り切れなくなっている。食料品などの国産品は安定供給されるものの、輸入品を中心に物価は上昇。最大都市イスタンブールで隔週誌を発行するアリエルジン・デミルハン氏(36)は、七千部の部数を半減すると決めた。輸入する用紙代の高騰で、印刷所からユーロでの支払いを求められた。「このままでは廃刊の危機だ」

 懸念されるのは外貨建て負債を抱える企業経営だ。ロイター通信によると、来年七月までに返済期限を迎えるドルやユーロ建ての対外債務は千七百九十億ドル(約二十兆円)で、国内総生産(GDP)の四分の一に達する。八割以上が民間部門のため、景気失速と増加する返済負担が重なれば、企業経営は行き詰まる。

 焦点は、十三日に開かれる中央銀行の金融政策決定会合。国際市場はインフレ抑制のために金利引き上げを求めている。しかしエルドアン氏は「金利のワナにはまらない」と中央銀行の独立性に介入する。中銀が利上げに踏み切らなければ、信頼喪失からさらなる通貨下落は避けられない。

米格付け大手のS&Pグローバルは、二〇一七年に7・4%だった経済成長率が一九年にはマイナス0・5%に落ち込むと予測。現在15・85%のインフレ率は20%まで上昇し、失業率は12%に悪化するとみている。

 

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