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シリア難民、帰還進むか 広がる警戒「拘束されるのでは」

国際

2018年8月27日 朝刊

6月、ドイツ・ベルリンのアラブ人街で買い物するシリア人ら=共同

 【カイロ=奥田哲平】シリア内戦でアサド政権を支えるロシアのプーチン政権が主導して、計五百万人超とされる国外避難民の帰還促進に向けた動きが進んでいる。ロシアには、国家再建への流れを印象付けることで、内戦終結とアサド政権の存続を既成事実化する狙いがあるが、難民の中にはロシアへの反発もあり、実際に帰還作業が進むかは不透明だ。

 「難民は欧州にとって大きな負担になり得る。だからこそ、母国に帰すために手を尽くさなければならない」。AFP通信によると、プーチン大統領は十八日、メルケル独首相と会談し、シリア難民の帰国やインフラ再建への財政的支援を呼びかけた。

 七月の米ロ首脳会談で難民問題に協力して取り組むことで一致して以降、ロシアは難民帰還に向けた取り組みを加速させる。アサド政権と難民受け入れセンターを設立。自宅を失った難民のために三十三万カ所の場所を用意し、半年以内に最大七十万人を迎え入れる計画を公表した。

 七年に及ぶシリア内戦の物的損失は三千八百八十億ドル(四十三兆円)。再建の担い手となる難民帰還は欠かせない上、ロシア一国だけでは復興を支えきれない事情もある。シリア人ジャーナリストのアハマド・ヌール氏は「現地では復興事業の利権の取り合いが始まっている。ロシア企業が進出し、カネを国際社会に出させるつもりだ」とみる。

 難民問題は、対立する欧州とも共同歩調が可能なテーマでもある。ロイター通信によると、ロシアは三百万人の難民を抱えるトルコと、帰還の枠組みを構築するため、独仏首脳を招いて会合を開く計画。ただ、仏外務省報道官は二十三日、政権軍とロシア軍が反体制派支配地域の北西部イドリブ県への総攻撃を計画中だとして「現状で帰還を考えるのは幻想的」と難色を示した。

 難民の間には警戒心が広がる。約百万人が滞在するレバノンで、子ども七人と暮らすホダ・アルハティーブさん(49)は「反体制派とみなされて拘束されるのではないか」と不安がる。難民支援団体のナビール・ハラビ代表は「市民を無差別攻撃したロシアが、人道支援する姿勢をアピールしたいのだろう。安全な帰還を保証できるのは国連だけだ」と話す。

 国外難民五百六十万人のうち、今年上半期で帰国したのは一万三千人にとどまる。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)はロシアの取り組みを評価しながらも、「難民の帰還は自発的でなければならない」と忠告する。

 

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