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米キャンパス ヘイト横行 白人至上主義集会 衝突1年

国際

2018年8月12日 朝刊

キャンパスの掲示板。反ヘイト集会の告知チラシ(左)の隣に「ここは白人歓迎」の張り紙があった

 米南部バージニア州シャーロッツビルで白人至上主義の集会に抗議した女性が参加者の男に殺された事件から十二日で一年になる。差別をあおる言動が目立つトランプ大統領の下、米国ではヘイトクライム(憎悪犯罪)が増加。公立大学のキャンパスでは思想的な対立が先鋭化し、憲法が保障する「言論の自由」と安全対策の両立を巡る葛藤が続いている。 (西部カリフォルニア州バークリーで、赤川肇、写真も)

 「ここは白人歓迎」。二日、カリフォルニア大バークリー校(州立)の掲示板。反ヘイト集会の告知チラシの隣に、何の脈絡もなくこんな紙が張られていた。

 バークリー校は一九六〇年代、キャンパスでベトナム戦争反対を唱えた学生が締め出しに抗議し、フリースピーチ(言論の自由)運動の先駆けとなった。半世紀たった今、言論の自由を盾にヘイトスピーチが横行し、差別反対派と衝突が相次いでいる。

 トランプ氏が就任した翌月の二〇一七年二月、同大で予定されていた右翼扇動家の講演が反対派の暴徒化で中止された。トランプ氏はツイッターで、合衆国憲法で定める言論の自由に反するとして大学への予算差し止めを示唆。同大広報担当のダン・モグロフ氏(61)は「いわれなき非難だった。保守系メディアも、大学が講演を妨げたという筋書きに固執していた」と振り返る。

 大学は一七年九月、著名な保守評論家の講演時の警備に六十万ドル(約六千六百万円)を投じた。一連の騒動を目の当たりにしたインド出身の法科大学院生シャストリ・サルバさん(28)は「あらゆる声を聞くことは大切だ。しかし講演よりむしろ騒動が目的のようなヘイトスピーチのために、貴重な大学の資金を使う必要があるのだろうか」と首をひねる。

 カリフォルニア州立大「憎悪・過激主義研究センター」によると、全米十大都市で一七年に起きた憎悪犯罪は前年から12・5%増えた。背景に白人至上主義などを掲げるヘイト団体の増加や、キャンパスでの宣伝活動の活発化などが指摘されている。

 バークリー校の教授らによる学長の諮問委員会は今年四月、衝突や暴徒化の一因を「大統領選をきっかけに注目された白人至上主義などの超保守主義的な言論が、新たな極右『オルト・ライト』の活動家たちを勇気づけ、時に極左勢力を刺激した」と分析している。

 米国では、人種や性的指向の動機に基づく憎悪犯罪という「行為」は連邦法で禁止されているが、ヘイトスピーチという「言論」そのものを直接取り締まる法律はない。

 実際、バークリー校の諮問委は四月の勧告で「ヘイトスピーチを含む言論の自由を守る」と明記。学生団体が外部から講演者を招く場合、事前に講演内容のふさわしさを大学側に説明させたり、特別な警備が必要な場合に人的な協力をさせたりするなど、間接的な対策にとどまった。暴力的な衝突が繰り返される恐れはくすぶったままだ。

<シャーロッツビル事件> 米南部バージニア州シャーロッツビルで2017年8月12日、白人至上主義者らの集会に抗議した群衆に車が突っ込み、弁護士助手のヘザー・ハイヤーさん=当時(32)=が死亡、19人が負傷した。憎悪犯罪行為罪などで起訴されたジェームズ・フィールズ被告(21)は事件前、インターネット上で、旧ナチス・ドイツの独裁者ヒトラーへの支持や白人至上主義を唱えていた。

 

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