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男女平等訴えた「証し」 女優カード40枚見つかる 100年前英国で活躍の画家が所有

国際

2018年8月1日 夕刊

英ロンドン南郊サリー州で7月27日、牧野義雄の絵画や、写真カードを示す恒松郁生さん。恒松さん自身も牧野を研究するためにカードを集めた=沢田千秋撮影

 百年前、英国の女性参政権獲得運動を支援した愛知県豊田市出身の画家牧野義雄が収集していた女優らの写真カード約四十枚が英国で見つかった。当時、ロンドンの売れっ子画家だった牧野は女性参政権の正当性を著書で主張。英国女性の絵を多く描きながら「女性は人間製造機ではない」と、女性の権利向上を訴えた。カードからは、牧野の英国女性に対する愛着が垣間見える。 (ロンドン・沢田千秋)

 写真カードの束を発見したのは、ロンドン南郊サリー州の日英交流史研究家、恒松郁生(つねまついくお)さん(67)。ずいぶん前に段ボールなどでまとめて購入した牧野の遺品を最近整理したところ、見つかった。

 カードは一九〇〇〜一〇年代のたばこ「オグデンズ」のおまけで、縦六センチ、横四センチ。英国の女優や歌手、王室関係者など、大半が女性の写真。「牧野は絵の参考に集めたのではないか」と恒松さんは言う。

 牧野は夏目漱石と同時代にロンドンに滞在し、二人は下宿も近かったが、英国での知名度は牧野が断然勝った。絵だけでなく、独特な英語で書かれた随筆も英国人に好まれ、日英同盟締結(〇二年)により日本に対する関心も高まり、大流行した。

 そんな中、牧野は英国の女性参政権運動家たち「サフラジェット」に出会い、交流する。一二年の著書「わが理想の英国女性たち」の中で、「選挙権を与えるか与えないかを性別によって決定するのは間違っている」と断言。議会制民主主義を打ち立てた英国で女性に選挙権がないことを「悪夢」と非難した。

 さらに「女性を単なる人間製造機としか考えない男は実に野蛮だ」と主張。「もし真に偉大な政治家がいるならば、その人は女性の天性を解放して伸び伸びと大海へ導き、この世界を優しさのあふれた美しい世界に変えることができるような広々とした運河を開くべきだろう」と記した。

 著作から六年後の一八年、英国で初めて女性の参政権が認められた。「牧野は英国女性を描く中で、彼女らの内面にも共鳴していったのだろう。当時、ロンドンの有名人だった牧野がこうした文章を発表するのは相当な影響力があり、参政権運動を支援する意図があったのではないか」。恒松さんはカードを見つめながら、そう話した。

牧野義雄がサインした本人の写真=恒松郁生さん提供

<牧野義雄(まきの・よしお)> 1869年、愛知県挙母(ころも)村(現・豊田市)生まれ。24歳から4年間、米国の美術学校で学び、28歳で渡英。英国の霧に包まれた風景や着飾った女性を描いた柔らかで繊細な水彩画が評価され、英王室や日本の皇族に献上したことも。日本人独自の視点での随筆も人気を集め、複数の英紙でコラムを手掛けた。第2次大戦中の73歳に引き揚げ船で帰国し、孤独と貧窮の中、1956年、87歳で死去した。

 

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