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英の離脱交渉、行き詰まり深刻 自由貿易圏構想、EU側が「ノー」

国際

2018年7月30日 朝刊

 【ロンドン=阿部伸哉】英国の欧州連合(EU)離脱を巡る交渉で、EUは英政府が七月に新たにまとめた交渉方針を事実上、拒否し、交渉の行き詰まりが深刻度を増してきた。何の合意もなく英国が離脱する混乱を避けるため、EUには交渉延長を探る動きもでてきたが、来年三月の離脱自体も先送りされるため、英政府は応じにくい見通しだ。

 「EUは関税の徴収を、加盟国以外に任せることはしない」。EUのバルニエ首席交渉官は二十六日、英国の新任のEU離脱担当相のラーブ氏をブリュッセルに迎えてこう明言した。英国が提案する「自由貿易圏」に事実上、「ノー」を突き付けた。

 メイ英政権は建前上、EUの二大柱である「単一市場」と「関税同盟」から脱退するとしていた。だが、産業界からの突き上げと、英領北アイルランドの開かれた国境維持のため、主張を後退させ、「関税同盟」の変形のような「自由貿易圏」案を打ち出した。

 EU職員の代わりに、英政府職員がEUの関税を集め、物流での国境検査をなくすという苦肉の策だ。メイ首相は、強硬離脱派の閣僚二人の辞任という代償を払ってまとめたが、バルニエ氏に「関税徴収はEUの主権」と退けられた。

 英新方針の柱が崩れたともいえ、代替案を出すのは難しい状況。英離脱が来年三月二十九日に迫り、その前に離脱の基本合意ができるかが最大の焦点だ。少なくとも英領北アイルランドとアイルランドの国境管理問題で合意できないと、英国は二〇二〇年末までの新貿易協定への移行期間をEUから撤回され、「無秩序な離脱」になりかねない。

 これはEUにとっても避けたいシナリオで、特にアイルランドは英国との経済関係が深く、深刻な打撃となる。「英国がもう少し時間を望むなら、支持する」と、アイルランドのコーブニー副首相は二十五日、英BBCラジオで交渉延長を容認し、バルニエ氏も離脱先送りに歓迎姿勢を示す。

 だが予測不可能なのが英国内の政治状況。少数与党の保守党内には、強硬離脱派が六十人程度いる。離脱先送りとなればメイ氏に反旗を翻し、野党の内閣不信任案に同調する可能性もある。英首相官邸は「英国は予定通りに離脱する」と強調している。

 

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