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<ひと ゆめ みらい>「よそ者」を地域ファンに 福井、小浜の芸術イベント実行委員長・杉本信昭さん(61)

東京

2018年8月6日

「よそ者」が地域に関わることでの影響について話す杉本信昭さん=新宿区下落合で

 「ここが、舞台だ」。五月に福井県小浜市で初めて開いたイベント「内外海(うちとみ) 海のステージ」でのキャッチコピーは、思いを真っすぐに言葉にした。メイン会場として、地域が誇る棚田に、くぎを使わず木を組んで野外ステージを設営。背後には若狭湾。ここで各地から集まったアーティストがパフォーマンスを繰り広げた。地域資源を内外にアピールする場となった。

 新潟市出身。映像制作やドキュメンタリー映画の監督として活躍する。二〇一一年二月、沿岸地域の活性化プロジェクトに映像記録の仕事で関わり、初めて小浜市の内外海地区に行った。出会った地域の人たちに人間的な魅力を感じ、仕事として終わってからも、定期的に訪ねた。

 一五年、一般社団法人「海の共同通信」を立ち上げ、個人的に二カ月に一度ほど足を運びながら交流を続けた。地区には十四の集落がある。特に田烏という集落は、戦前からある約百戸の家が協働して巻き網漁を行っていた文化があり結び付きが強い。「独自の文化や団結力がある。ここでまず何かやりたい」と思った。

 若い世代が出て行き、高齢化が問題となるのは内外海も例外ではない。かつてにぎわった海水浴場も廃れ、立ち並んでいた民宿は二、三軒が残るのみ。「問題はそう簡単でなく、すぐに変わるとは思っていない。でも、都会で地盤を作るのが難しい人もおり、地方のほうがある意味住みやすい人もいる」。イベントは、地域で生きる選択肢を知ってもらうのにつなげようと考えた。

 縁もゆかりもない「よそ者」だからこそ、住民が当たり前と感じる風景や土地での暮らしが特別なものに映る。自分のような持続的な地域のファンを増やそうと、昨年九月に実行委員会を立ち上げ、イベントの準備を始めた。

 実行委には六十代の住民や、地元の高校の教諭と生徒、小浜市職員、若い大工やカフェ経営者ら十人が集まった。ステージには、全国で活動するアーティストを呼んだ。「何が起こるのだろう」と様子見していた集落の人たちも当日は足を運び、楽しんでくれた。

 チームで一から作り上げるイベントは、非日常の世界を創り出す。でも、いずれはその世界を日常にしてほしいと考える。ステージでの演目を決めるにあたり、「地元の発表会ではだめ」と言った。内輪だけで完結してはいけない。舞台の力を、外に伝え続ける仕組みを作っていきたいと思っている。 (神谷円香)

<内外海 海のステージ> 5月12、13の両日、福井県小浜市・内外海地区の田烏集落で開催。棚田ステージやまち歩き企画、ワークショップなどに市内外から約600人が訪れた。内外海地区は県南部のリアス海岸沿いに14の集落があり、来年も田烏で、2年後は隣の集落でイベントを開く予定。

 

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