XMenu

暁斎とその娘、暁翠を世界へ発信! 作品解説で本格的な英訳登場

東京

2018年6月16日

河鍋暁斎、暁翠の作品が並ぶ会場=八王子市で

 八王子市谷野町の東京富士美術館で開催されている絵師、河鍋暁斎(かわなべきょうさい)と長女暁翠(きょうすい)の作品展「暁斎・暁翠伝」は、英語による解説の充実ぶりが際立っている。翻訳サービスを手掛ける国立市の会社が主催に加わるなどして、日本語解説では省略できる文化的な背景にも踏み込んだ英訳が実現した。 (水谷孝司)

 外国人観光客の増加に対応して、文化庁は美術館、博物館の展示や解説の多言語化を進めている。上野の西洋美術館など国立の施設は昨年四月から日本語に加え、英語、中国語、韓国語で表記するようになったが、民間の施設などではなかなかそこまで対応できていないのが現状だ。

 富士美術館はこれまでも多言語化に取り組んできたが、今回の「暁斎・暁翠伝」では地元・多摩地域から日本文化を発信しようと考えていた国立市のトランズパシフィックエンタープライズ社と協力。同社が解説文などの英訳に当たった。

 ただ、「賽(さい)の河原」や能、狂言などを題材にした作品の解説を英訳するには、日本文化の理解が不可欠。専門的な知識をもつスタッフと英語を母国語とするスタッフのチェックで、正確さと自然な表現の両立を目指したという。

 会場内の展示だけでなく、図録を一般書籍として発刊し、電子書籍化も実現させた。同美術館の学芸員鴨木年泰さんによると、英字新聞に紹介されてから同展を観覧に訪れる外国人が増えたり、日本文化を海外に紹介する活動をしている人たちの関心を集めたりしているという。

 同社のレイ・デボア社長は「外国人は日本文化に関心をもっている。日本も大胆に変わって、自己アピールをしていかなければ」と情報発信の重要さを強調した。鴨木さんは「専門的な翻訳の能力がある会社などが増えてきたら、小規模な美術館でも多言語化の手間とコストの問題をクリアできる」と語った。

 「暁斎・暁翠伝」は二十四日まで。問い合わせは同美術館=電042(691)4511=へ。

河鍋暁斎「極楽太夫図」(「河鍋暁斎記念美術館」蔵)(注)現在展示されていない。

◆河鍋暁斎の作品「極楽太夫図」解説の例

【日本語】 帯の布袋と唐子は賽(さい)の河原の地蔵と水子、袖の寿老人が閻魔王、裾の壺は地獄の釜で恵比須・大黒天は地獄の獄卒。七福神や宝物を地獄に見立て、この美女が地獄太夫であることを示している。

【英語】 「The Paradise Courtesan」

 Hotei and karako (Chinese children) on the sash represent Jizo Bosatsu and dead children at Sai no Kawara (place where all children go at death). Jurojin on the sleeve is the King of Hell, Enma; vases at the bottom of the kimono are ovens in the hell; and Ebisu and Daikokuten are gokusotsu (evil ogres that torment the dead in hell). By portraying the Seven Gods of Good Fortune and treasures as figures or items related to hell, Kyosai implies that this beautiful woman is the Hell Courtesan.

<河鍋暁斎・暁翠> 暁斎(一八三一〜八九年)は幕末から明治前半に江戸、東京で活躍した狩野派の絵師。浮世絵、戯画、西洋画など幅広く手掛けた。人気漫画「ワンピース」の作者尾田栄一郎さんも影響を受けたとされる。暁翠(一八六八〜一九三五年)は父に学んで日本画家となり、現在の女子美術大学の草創期に女子教育にも尽力した。

 

この記事を印刷する