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<ひと ゆめ みらい> 「地域の原風景」ガイド NPO法人みどりのゆび・神谷由紀子さん

東京

2018年5月14日

緑豊かな「小野路宿」のフットパスを案内する神谷さん。ガイドマップの掲示板などもNPOで設置した=町田市で

 産業革命以降の英国で定着した「フットパス」。森林や古い街並みなどをたどり、景観や歴史をありのままレクリエーションとして楽しめるように工夫された散歩道のことだ。神谷さんは、国内でフットパスに先駆的に取り組み、モデルコースを決めたり、ガイドマップ集にまとめたりしてきた活動で知られている。

 町田市小野路(おのじ)町が、活動の原点だった。街道がいくつも交差し、江戸時代は宿場町として栄えた交通の要衝。日本の原風景を思い起こさせる景色に魅了されて何度も歩き回った末に、一九九〇年代後半からここでガイドツアーを始めた。

 後に新選組幹部となる近藤勇や沖田総司も歩いたとされる小野路宿の「布田(ふだ)道」を進むと、曲がりくねった小径(こみち)の脇を小川が流れ、野鳥のさえずりが聞こえる。途中の農家を休憩所に使わせてもらい、手料理をごちそうになりながら語らうのも、コースの中に組み込んだ。ツアーの参加費から農家や自治会への謝礼も賄った。

 ガイドマップ集の「小野路宿」のページには、六・三キロのモデルコースで出合う寺や道祖神、珍しい大木、眺望ポイント、飲食店などの情報が示されている。

 モデルコースを決める際には、見どころとなるスポットを誰でも自由にたどれるように、公道だけでつなぎ、私有地には立ち入らない。だが、マップに載せる前には地元住民にあいさつして、理解を得ることも忘れないという。

 「住民が長い間守ってきた文化や歴史、景観を、立体的に体験する新しい観光のスタイルだった」。そう位置づけるフットパスへの理解や共感は広がりつつあるようだ。

 里山を道路や宅地に変えるのではなく、あるがまま残すことで人の往来が戻り、さまざまな消費にも波及して地域に豊かさをもたらす。「街づくりの実践として、地元にも行政にも理解してもらえた」と、活動を通して証明してきた自負がある。

 二〇〇二年にはNPO法人に移行し、理事として各地へ講演に出向く。長野県や宮城県などでもフットパスのモデルコースづくりにかかわっている。

 「フットパスは全国的な知名度がなくてもいい。そこにしかないものを大切にすれば、リピーターは増える」 (栗原淳)

 NPO法人の名称「みどりのゆび」はフランスの童話のタイトルで、日本の里山が美しい緑でつながってほしいという願いを込めた。ガイドマップ集「多摩丘陵フットパス」は(1)、(2)の2冊を刊行。「小野路宿」は(1)に収録。各500円(税別)。問い合わせは同法人=電042(734)5678=へ。

 

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