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「平和シリーズ」最後の1冊 慰安婦絵本を8年経て日本語訳

東京

2018年4月28日

(右)従軍慰安婦がテーマの絵本「花ばぁば」(左)クォン・ユンドクさん(ころから提供)

 従軍慰安婦をテーマにした韓国の絵本「花ばぁば」が5月1日、北区の出版社から日本語訳で発売される。日本の絵本作家の呼び掛けでいったん制作されるも、国内での出版はお蔵入りしていた。多くの応援や賛同で、韓国での出版から8年を経て日本でも読めるようになる。 (中村真暁)

 絵本は韓国の絵本作家のクォン・ユンドクさんが、「花ばぁば」と呼ばれるシム・ダリョンさんの証言をまとめて二〇一〇年に韓国で出版。少女だった花ばぁばが慰安婦にさせられ、心や体に傷を負い、悲しみや恐怖を感じた、という作品だ。

 田島征三さん(78)や浜田桂子さんら日本の絵本作家が呼びかけて〇七年に始まった「日・中・韓平和絵本シリーズ」のうちの一冊。日本、中国、韓国の三カ国の絵本作家十一人が、平和をテーマに十一作品を作り、「花ばぁば」以外の十作品は既に日本国内で販売されている。

 「花ばぁば」は、出版準備をしていた日本の出版社が断念。その理由について、シムさんの証言による連行時期と場所が公文書と一致せず、間違いが指摘される可能性があったためと、今回出版される本では説明している。

 田島さんらは出版社を探し続け、多様性がテーマの書籍を多く手掛ける「ころから」(北区)と出会う。代表の木瀬貴吉さん(51)が意見を聞いて回ったジェンダーなどの研究者らはみな、出版に賛同。翻訳や印刷経費をインターネットで募ったクラウドファンディングでも、二百人余りから約百九十万円が集まった。

 木瀬さんは、多くの人の応援に背中を押されたといい、「従軍慰安婦を扱うから出版できない、この問題を語れないことが普通であってはならない」と強調する。田島さんも「知らせることが一番大切。戦争は弱い者を犠牲にし、悲劇を引き起こすことが伝われば」と話す。

 絵本では、クォンさんも日本での出版の意義を説いている。「慰安婦はどこにでもいる普通のおばあさんで、彼女たちの経験は過去の出来事ではなく、またいつでも起きうること。平和と人権という普遍的な価値がより大きな力を得るきっかけになると信じている」

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 「花ばぁば」は、千八百円(税別)。クォン・ユンドクさんの出版記念トークイベントが二十九日午後二時半、千代田区神田神保町二のブックハウスカフェである。参加費は千五百円。予約・問い合わせは、同カフェ=電03(6261)6177=へ。

 

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