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<東京人>ビル散歩 細部に宿る職人技

東京

2018年4月8日

丸の内3丁目に立つ、1965年竣工の新東京ビル

 第二次世界大戦の後、一九七〇年代半ばごろまでに建てられたビルを見て歩くのが好きです。それらは味気ない鉄筋コンクリート造で、平凡な街の背景のように感じられるかもしれませんが、少し目を凝らせば、一棟一棟の異なった佇(たたず)まいが見えてきます。

 大きなガラス窓、直線的なデザインだったとしましょう。潔い割り切りは「近代的」や「工業的」という言葉が輝いていた時代を物語ります。それでいて、壁には今では見かけない深い色味のタイルが一枚一枚貼られていたりして、工業製品の率直さと職人の誠実さが伝わります。

 入り口や階段まわりも見どころです。簡素な素材を工夫して人をもてなそうとしていたり、世界でここにしかない手すりの形だったりしますから。

 有名建築家の設計でなくても、グッとくるビルは東京にたくさんあります。例えば伸びやかで繊細な内部空間を持った新東京ビルのように。意識してみると、街がもっと楽しくなります。最近はそんなビルの面白さに目覚め、語り合える仲間が増えてきました。

新東京ビルの内観。2層吹き抜けの内部通路が続く=千代田区で

 このころのビルが持っているのは、決してレトロで消えゆく味わいだけではないでしょう。既製品や完全にパターン化されたやり方がなかった当時、当たり前にデザインやものづくりに込めた手仕事が、今は贅沢(ぜいたく)です。一棟一棟に時代の最先端を背負うんだという気合がこもっています。ビルを散歩すれば、次の未来を創造するためのアイデアとエネルギーももらえます。 (倉方俊輔)

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 「都市を味わい、都市を批評し、都市を創る」をキャッチコピーに掲げる月刊誌「東京人」の編集部が、5月号の記事をもとに都内各地の情報をお届けします。問い合わせは、「東京人」編集部=電03(3237)1790(平日)=へ。

 

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