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犠牲者の言葉 ダンスで 鈴木一琥さん公演 東京大空襲

東京

2018年3月7日

大空襲で焼け残った蔵の中で、公開稽古に臨む鈴木さん=台東区で

 東京大空襲で永遠に失われた犠牲者の言葉、炎の中を逃げて生き延びた人々の言葉−。双方を肉体にまとい、表現する鈴木一琥(いっこ)さん(45)=墨田区京島=のダンス公演「3・10 10万人の言葉」が九、十日、台東区の「ギャラリー・エフ」(雷門二)で開かれる。一夜にして十万人の命が奪われた七十三年前の「あの日」を、来場者と演者が、暗闇で共有する。(井上幸一)

 公演は二〇〇五年以来、毎年同じ日に、同じ会場で催され十四回目。戦時下の生活や一九四五年三月十日未明の大空襲を語る十数人の高齢者の声が流れる中、一心不乱に踊る。鈴木さんは「毎年、証言を加えて、音声を作り直している。いつも新作のつもり」と、その場限りのパフォーマンスであることを強調する。

 会場のギャラリーは江戸末期の土蔵。大空襲で焼け野原となった浅草に焼け残った。内部は暗くて狭い。「防空壕(ごう)の中にいるような雰囲気」と鈴木さん。「毎年来られる人たちには、戦争体験を積み重ねているように感じてもらえる。蔵自体が『生き証人』。不思議なこと」と言う。

 音声の構成は、鈴木さんの妻で、アーティストのカワチキララさん(46)が担う。今回は大空襲で乳飲み子の娘、夫、母を失い、戦後に児童養護施設で五百人以上の子どもを育てた百五歳の女性の声が加わった。カワチさんはこの女性の発言を「危機感を通り越して、(戦争まで)秒読み寸前と世相を感じている気がした」と評した。毎年、取り巻く社会情勢が変化しており、観客の受け取り方も違ってくるという。

 公演は九日が午後七時、十日が午後三時開演。定員三十人。要予約。前売り三千円、当日三千二百円。ワンドリンク付き。問い合わせ、申し込みはギャラリー・エフ=電03(3841)0442=へ。

 

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