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カッパと伝える大空襲 浅草出身の作家 自身の体験基に絵本

東京

2018年3月4日

東京大空襲を題材にした絵本「火のカッパ」を発表した漆原智良さん=羽村市で

 すみだ川のカッパが、東京大空襲から少年を助けてくれた−。羽村市の児童文学作家、漆原智良さん(84)が「空襲の事実を風化させてはならない」との思いから、自身の戦争体験を基に絵本を発表した。十日は大空襲から七十三年。 (奥野斐)

 物語は、下町の浅草に住む少年が主人公。悪さをすると、祖母に「カッパがやってきて、すみだ川につれていかれてしまうよ」などとしつけられ、その存在を信じていた少年は、大空襲の夜、カッパに導かれて炎から逃げ、生き延びる。

 「戦争の悲惨さを、架空の生き物を登場させ、新たな視点で描いた」と漆原さん。東京下町が焼き尽くされた大空襲では、一晩で十万人が亡くなったとされる。

 漆原さんは浅草生まれ。小さいころ、祖母からよくカッパの話を聞いた。大空襲の際は疎開していて、炎の中を逃げ惑うことはなかったが、この空襲で祖母や父を亡くした。すでに母も他界しており、終戦後は母方の祖父に育てられた。「父や母が、どこかでカッパと一緒に楽しく暮らしているのかなと思うことで、救われてきた」

 絵本には、肌で感じた戦争が激しくなっていく日々の様子、同級生らから聞いた空襲下の状況が、文とともに迫力あるタッチの絵で描かれている。

 漆原さんは「戦争体験者が減り、書き残しておかないと、という思いが強い。親子で絵本を読み、平和について考える機会にしてもらえたら」と話した。絵本は「火のカッパ」(国土社刊)。千六百二十円。

 

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