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「相模屋」300年で幕 池上本門寺門前 くず餅老舗閉店へ

東京

2018年1月19日

多くの人に親しまれた「相模屋」=大田区で

 日蓮宗大本山・池上本門寺(大田区)の門前にあるくず餅店「相模屋」が、近く閉店する。江戸時代元禄期に団子屋として始まり、参拝者のためにさまざまな商いを続けてきたが、後継者がおらず、300年続いた看板を下ろすことになった。 (原尚子)

 本門寺の周辺には現在、四軒のくず餅店がある。相模屋のくず餅は、他店よりも硬いのが特徴。「しっかりとした歯応えで、味わいがある」と人気を集めてきた。創業家の十三代目主人、山本猛さん(59)は「長年、お客さまに育ててきてもらっていたが、苦渋の選択として閉店を決めた」と話す。昨年十二月、ホームページに閉店の知らせを載せてからは「なぜ」「続けて」などの電話が相次ぐ。

 近所に住む常連の越川芳野さん(76)は「おばさん(照さん)が感じが良くて、いつも蜜を余分にくれた。頑張ってほしかったのに」と残念そう。

 相模屋は元禄九(一六九六)年、相模国(神奈川県)出身の山本彦兵衛が開いた。江戸と神奈川を結ぶ「平間街道」の休み処にした。平間とは川崎の地名。現在、店の敷地の角に「是よりひたり(左)かわさき道」などと刻まれた道しるべがある。彦兵衛が建てたとされる。

 「相模屋」の看板はそのままでも店の営業形態は時代によって変わり、薬を売っていたこともあった。猛さんの伯母で十二代目の山本照さんは終戦直後、焼き芋を売った。復興とともに今川焼きやところてん、ホッピーとメニューを増やしていった。

 くず餅専門店に衣替えしたのは一九五八年。猛さんの母で今は亡き登代子さんが客から「くず餅も売って」と言われたのがきっかけだ。老舗くず餅店が近隣で繁盛しており、池上名物としてくず餅のイメージが広がる。食べ比べのために訪れる客も増えた。

 猛さんは現在、インドネシア・バリ島でホテル業も営み、八十七歳になった父の世話もあって、くず餅店との両立は「体力的に厳しくなった」と言う。後継者がいないため、店じまいすることにした。「残念な気持ちもあるが、前向きだった母のように未来を考えて生きたい」と話した。

 

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