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<東京NEWS2017>(4)踏切事故 高齢者に危険 浮き彫り

東京

2017年12月27日

西武池袋線の池袋第8号踏切内に増設された障害物検知装置(中央下方の平べったい装置)=豊島区で

 二月、都内の三カ所の踏切で、お年寄りの死亡事故が三日続けて起きた。今年発生した七件の踏切死亡事故のうち六件で、お年寄りが電車にひかれて亡くなった。転倒したことが主な原因だった。

 二月に起きた三件の現場を歩くと、いずれも渡りきるまでの長さが十メートルほど。生活道路にある、ごく普通の踏切だった。丈夫な人なら数秒で通れる場所が、足腰の弱いお年寄りには身近な危険になっていた。

 警視庁によると、過去十年間、踏切で死亡した人の半数近くを六十五歳以上が占める。交通規制課の担当者は「お年寄りは踏切の少しの段差でもつまづき、転倒の危険が避けられない。このままでは、今後も間違いなく事故は増えるだろう」と危機感を抱く。

 多くの踏切には、照射しているレーザー光線が遮られて異常を感知し、運転士に赤信号で知らせる障害物検知装置(障検)が設置されている。死亡事故が起きた四カ所にも付いていたが、検知対象としているのはいずれも、衝突すれば電車にダメージを与える、立ち往生した自動車だった。

 そのため、レーザーの照射位置は、人の胸や腰の高さに相当する地上七十五〜百二十五センチの場合が多い。人が転倒すれば、照射範囲から外れて検知できない。五月に京成押上線の踏切で死亡した男性=当時(91)=も、前のめりに転んで起き上がろうとしたのに、四つんばいの状態になって検知されなかった。

 お年寄りの事故の続発を受け、対策が始まった。西武鉄道は六月、転倒した人も検知できるよう、レーザーを地面すれすれの高さ十三センチに走らせる障検を池袋線の踏切に増設し、実証実験を始めた。二月に手押し車の女性=同(78)=が転んで死亡した現場だ。

 同社によると、これまでに二度、転んだ人を検知した。いずれも列車は手前で止まり、乗務員や周りの人が助け出したという。一方で、猫を十六回検知し、小動物対策が課題だが、広報担当者は「人命が最優先。雪が降った場合にも検証したい」と語り、今後も実験を続ける。

 都内には千四十八カ所の踏切がある。これだけ残っているのは、高度経済成長期の大量輸送のニーズに追われ、踏切対策まで手が回らなかったからだ。踏切を無くすには、線路の地下化や高架化といった、長い時間と巨額の費用が必要だ。

 現場を歩いて分かったのは、驚くほどわずかな段差や傾斜にも、命を脅かす危険が潜んでいることだ。社会が成熟した今、身近な危険を減らす街づくりを迫られていると感じた。(加藤健太)

 

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