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<東京NEWS2017>(3)市場問題 移転決定も「跡地」混迷

東京

2017年12月26日

市場の移転方針について記者会見する小池百合子知事=今年6月、都庁で

 今年の流行語大賞に一票を投じることができるなら、「アウフヘーベン」を選びたい。難解な横文字は六月、市場の移転問題で小池百合子知事が突如、用いて話題になった哲学用語だ。

 対立するものごとを第三の道で解決するといった意味がある。つまり、築地か豊洲かではなく、選ぶのは第三の道−。

 小池知事はそれまで、築地か豊洲かについて一切、考えを明かさなかった。しかし、国会議員時代から築地の建て替えを主張し、築地への思いが勝っている様子は時折、透けて見えた。

 一方で、築地の建て替えは困難で、移転しなければ二〇二〇年東京五輪・パラリンピックの輸送拠点を設けることができない。取材の注目点は、思いと現実の折り合いをどうつけるのか、だった。

 都議選直前の六月二十日、小池知事は豊洲への移転をついに発表。「築地と豊洲を両立させることが最も賢い使い道」とも述べ、築地跡地は市場機能を持たせた食のテーマパークにする方針を打ち出した。市場業者や都職員からは「よく分からない」と不評だったが、都議選でこの方針に沿って公約を掲げた都民ファーストの会は大勝した。

 風向きが変わったのは、豊洲市場内の観光拠点「千客万来施設」を整備する企業が「築地に似た施設ができれば採算がとれない」と反発し、地元の江東区や市場業者から懸念の声が出たためだ。小池知事は食のテーマパークについて「一つの考え方として申し上げた」とトーンダウンした。

 問題なのは、そんな方針はなかったかのごとく、さらりと修正したようにみえたことだ。その代わり、小池知事から新しく出てきたのは「豊洲ブランドを確立したい」という言葉だった。

 小池知事は築地ブランドにこだわる一方、豊洲の将来像は総合物流拠点という位置付けをしてきた。市場業者たちが、食材に対する目利きなどで築地ブランドをつくってきたことを自負し「豊洲でもブランドを築く」という気概を抱いてきたのとは対照的だった。

 アウフヘーベンとは結局、何だったのだろう? 豊洲の開場が来年十月十一日と決まった今月、築地市場協会の伊藤裕康会長も移転問題を振り返って嘆いた。「築いたものを壊したり、また立て直したり。振り回されて疲れた。結局は元に戻った。何だったんだと、あらためて問い直したい」 (内田淳二)

 

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