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<ひと ゆめ みらい>家族が転機 人の役に 「メモリバ」企画・運営 吉川和宏さん

東京

2017年12月4日

無数のシャボン玉を前にポーズを決める吉川和宏さん=足立区で

 「ケンカばかりで友だちができず、小中学校での楽しい思い出はなかった。自分と同じ経験だけは絶対にさせたくない」

 十一月下旬、光輝くシャボン玉が飛び交う足立区の関屋公園(千住関屋町)。無邪気にはしゃぐ子どもたちを見守る大人の中で、ひときわ目立つ、こわもての男には強い思いがあった。

 今回で七回目となったアートイベント「MEMORIAL REBIRTH(メモリアルリバース、通称メモリバ)千住」には家族連れなど約二千人が集まった。一分間に最大一万個のシャボン玉を発生させる特製装置に近づこうとする子どもを制止し、不審者がいないか目を光らせるのが役割。二〇一一年度の初回から当日の警備のほか、企画・運営に参加している。「親子一緒に楽しんでいるのがうれしいよね」と目を細める。

 千住で生まれ育った。母は夜の仕事で昼夜逆転の生活。父はばくち好きで、たまに自宅に帰ると夫婦ケンカが始まった。当時は小学校も荒れていて「力が全て」の環境で小学二年からケンカに明け暮れた。中学生になると警察にもお世話になった。「そりゃ心もすさむよ。家庭と地域、両方が悪かった」と振り返る。

 転機になったのは家族の存在だ。十九歳の時、スポーツクラブで出会った妻の律子さん(51)に一目ぼれ。三年間口説いて恋は実り、三十一歳で結婚。長女の琴音さん(23)、次女の彩さん(22)が生まれた。出産で苦しむ律子さんを見て、「自分も子育てを頑張らなきゃ」と自覚が生まれた。

 琴音さんが小学一年になると、PTA活動を熱心に手伝った。翌年、PTA会長に選ばれると、学年対抗カレー大会などアイデア企画を次々に実現し、みんなから感謝された。「自分は社会に必要とされていない人間だと思っていた。ボランティアで人の役に立てるのがうれしかった」

 メモリバは現代美術家の大巻伸嗣さん(46)が考案し、国内外で披露しているアートパフォーマンス。アトリエがあった縁で千住だけは毎年開催し、当日披露される踊りや音楽に地元住民も多数参加する。仲間集めを含め地域との橋渡し役を果たす吉川さんを、大巻さんは「なくてはならない存在」と信頼を寄せる。

 「娘と同年代の若者にいろいろ頼まれるのがうれしくってさ。子どもの時にできなかった経験を今させてもらっているのかな」 (川田篤志)

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 本業は「ガチャガチャ」の呼び名で知られるカプセル玩具製造企業に勤めている。足立区青少年委員を委嘱されているほか、千住地域の防犯パトロール隊「ガーディアンシップ北千住」を2006年に創設するなど地域活動に熱心に取り組んでいる。

 

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