XMenu

<ひと ゆめ みらい> 青少年育成、薬物乱用防止活動40年 横沢史和さん(72)=大田区

東京

2017年10月9日

地元の観光イベントで薬物乱用防止を訴える横沢史和さん=大田区で

 「お節介(せっかい)だからさあ。若いやつに相談されたら断れねーのよ」。言葉はぶっきらぼうで一見こわもて。だが、触れ合えば優しさと人情味がにじみ出る下町のおやじ。保護司でも民生委員でもない一民間人の立場で悩める青少年に救いの手を差し伸べて四十年になる。

 バイクを盗んだ中学生、シンナー中毒の女子高生、人を傷つけてしまった暴走族…。経営する大田区の飲食店は長年、非行少年らの駆け込み寺。これまで数十人の若者から相談を受け、健全な道に導いてきた。

 「状況がどれだけ絶望的でも安易に警察に行け、と突き放さない主義。寄り添って心の声を聞き、ともに悩んで最善の未来を探す」

 親や学校、警察の間に入り、ときには裁判所の証言台で減刑を訴える。少年院に足を運び、就職先の世話をしたこともある。

 「身長一六五センチのおれが一八〇センチを超す暴走族リーダーにつかみかかったこともあったんだ」「薬物を取り上げて当局に相談に行ったら自分が逮捕されそうになった」…。冗談交じりに語る経験談は聞くだけでハラハラする。「対処を間違えれば自分の身が危ない。公務員や肩書のある人間にはできない仕事だよ」

 報酬やお礼、行政からの表彰も拒んでの奉仕活動。情熱の源を問うと「若いころ、殻を破れなかった苦しさ、悔しさがある。問題を抱える子どもの気持ちが分かるから」。

 大田区池上に生まれた。男ばかりの六人兄弟の末っ子。優しい兄たちに囲まれ「弱虫で泣き虫だった」。高校時代は番長をめざしたが挫折。社会に出て美容師、芸能事務所マネジャーと職を変えたが「不完全燃焼だった」。地元に帰って町会など地域の活動を手伝っていた三十歳のころ、頼まれて警視庁の少年警察協助員になった。非行少年と向き合う中で自分の居どころを見つけたという。

 最近は非行に直結する薬物乱用の怖さを子どもたちに伝える活動の中心。区内の全五警察署を巻き込んで年五、六回の啓発イベントや、小中学生が作った標語の表彰に力を尽くす。

 横沢さんの活動を支える蒲田署OBの鈴木正義さん(60)は「欲がない純粋な人だから応援したくなる」。活動仲間の内山隆子さん(62)は「本当に忍耐強く頑張ってきた。そろそろ年齢面を考えて」と心配そう。

 本人は「若いやつらには負けねーよ」とカッカッカッと笑った。(梅村武史)  

 横沢史和さんが副会長の都薬物乱用防止推進大田地区協議会は、麻薬や覚醒剤、危険ドラッグなど心身をむしばむ薬物乱用を根絶するため街頭啓発活動や薬物乱用防止教室を行っている。啓発イベントの要望や協力、青少年の非行相談などについての問い合わせは横沢さん=電090(6530)2603=へ。

 

この記事を印刷する