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「政治家発言 記録残すな」 経産省、公文書管理で指示

政治

2018年8月31日 朝刊

経産省が公文書管理の運用について職員に配布した文書。「発言の詳述は必要はない」と記載されている(※部分の点線の囲みは本紙による)

 政治家や首相官邸、各省庁とのやりとりについて、経済産業省の複数の職員が「三月に上司から『今後は発言を一切記録に残すな』と指示された」と本紙に証言した。本紙が入手した経産省の内部文書にも、省内外の打ち合わせの記録について「議事録のように、個別の発言まで記録する必要はない」と明記されていた。職員によると、四月以降、省内では公文書となる打ち合わせ記録には詳しい発言内容を残さなくなったという。 (望月衣塑子、藤川大樹、中沢誠)

 森友学園や加計学園などの問題を受け、改正された政府の公文書管理のガイドラインでは、行政の意思決定の過程を検証できるよう文書の作成を求めている。経産省の運用では十分な検証ができない恐れがある。

 文書を作成した情報システム厚生課の担当者は「(公文書管理を所管する)内閣府に確認して決めた。一言一句残しておく必要がないという趣旨で、『一切残すな』という意味ではない」と主張。内閣府公文書管理課の担当者は「経産省には、後付けの検証ができれば全ての詳細な記録はなくてもいいと回答したが、『記録を一切残すな』との指示が併せて出ていたらガイドラインの趣旨からも外れており、問題だ」と指摘する。

 本紙が入手した複数の文書には、「公文書管理について」との表題が付き、「平成30年3月 情報システム厚生課」と経産省で文書管理を担当する部署名が記載されている。いずれもガイドラインや経産省の規則の改正を受け、四月から運用される文書管理の新たなルールを解説している。

 複数の経産省職員によると、文書は三月に省内の会議で説明されたり、職員に配布されたりしたものだという。会議で文書の説明を受けた職員は、「上司から、今後は他省庁との会合や政治家など偉い人の前では一切メモを取らないように指示された」と明かす。

 本紙が入手した文書には、「政策立案や事務・事業の方針等に影響を及ぼす打合せ等の記録」について、「『記録』は『いつ、誰と、何の打合せ』かが分かればよく、議事録のように、個別の発言まで記録する必要はない」「議事録のように、発言の詳述は必要はない」と記載していた。

 加計学園の問題では、関係機関の協議が記録に残っていなかったため真相究明が阻まれている。

◆決定過程検証できず

<NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長の話> 行政文書は発言まで記録しなければ意思決定に至る過程を十分に検証できない。経産省の運用では、公文書管理の制度そのものが形骸化してしまう。森友・加計問題で政治家や省庁間のやりとりの文書が出てきたことが、政権にとって痛手になったため、自分たちに望ましい記録だけ残そうという意図を感じる。

<行政文書の管理に関するガイドライン> 行政文書の作成や保存の基準を定めた政府の方針。森友・加計問題などを受け、2017年12月に改正され、省庁内や外部との打ち合わせ記録は行政文書として作成するよう明記された。意思決定過程の検証に必要な文書は1年以上保存としたが、どの文書が該当するかは各省庁が決めるため都合の悪い文書を残さない可能性は残る。ガイドライン改正に基づき各省庁は規則を見直し、4月から新たな運用を始めている。

 

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