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「オール沖縄」声上げ続け 怒りの翁長氏、県民率い

政治

2018年8月9日 朝刊

知事公舎の庭にあるガジュマルの木の前で、琉歌を刻んだ石碑(左手前)について語る翁長雄志知事=1月1日、那覇市で

<評伝> 「辺野古に新基地をつくらせない」。翁長雄志氏はその一点で沖縄の保守と革新の両陣営を結び付け、二〇一四年十一月の沖縄県知事選で前職を十万票の大差で破り、第七代県知事に就任した。自民党出身の保守政治家ながら「イデオロギーよりアイデンティティー」「オール沖縄」を訴え、辺野古移設を進める政府に立ち向かった。今年七月には、前知事の埋め立て承認撤回を表明。最後まで新基地建設反対の先頭に立った。

 昨年九月から今年二月末まで、沖縄の地元紙「琉球新報」に出向し、翁長県政を間近で取材した。その半年間も米軍機の不時着炎上や、小学校へのヘリ窓落下など、米軍による事件・事故が相次いだ。翁長氏は米軍側に「県民は疲れ果てて、何ら信用できない。とても良き隣人とは言えない」と抗議。日米両政府に対して声を上げ続けても一向に変わらない現実に怒り、あきれ、それでも諦めることなく、沖縄を代表して声を上げ続けてきた。

 五十四歳で胃がんとなり胃の全摘手術を受けた。知事就任後に刊行した著書「戦う民意」では「政治的に死んでも肉体的に滅んでも、沖縄を代表して言いたいことを言おう」と宣言していた。

 ことしの元旦、那覇市の知事公舎へあいさつに行くと、愛する孫らとともに出迎え、庭にあるガジュマルの木を見せてくれた。両手を広げても抱えきれない太い幹。木の前には、知事が自ら発注したという、琉歌が刻まれた石板があった。「芯や天冠みてぃ、枝や國廣ぎ、根や地の底に、果ていん無らむ」

 広く枝や根を張るとの意味。しかし枝を伸ばすべき空には米軍機が飛び、根を張るはずの県土には米軍専用施設が集中し、新基地も造られようとしている。

 六月二十三日の沖縄「慰霊の日」追悼式では、がん治療の影響で頭髪のない、痩せた姿で会場を見据え、平和宣言を読み上げた。「辺野古に新基地を造らせないという私の決意は県民とともにあり、これからもみじんも揺らぐことはありません」。会場から大きな拍手や指笛が送られた。

 翁長氏が民意とともに人生を懸けて、子や孫のためにつくり上げようとした沖縄の姿。その決意は県民の心に受け継がれている。 (村上一樹、写真も)

 

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