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焦る新基地反対派 政権、弔い合戦警戒

政治

2018年8月9日 朝刊

辺野古埋め立て承認を巡る支援者集会で代執行訴訟の勝利を誓いガンバローのかけ声で拳を突き上げる翁長雄志知事と市民ら=2015年12月2日、那覇市で

 八日に死去した沖縄県の翁長雄志知事は、米軍普天間(ふてんま)飛行場(宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古(へのこ)移設に伴う新基地建設に反対を続けたシンボル的存在。十一月予定だった知事選は九月中に前倒しされる見通し。再選出馬を期待してきた移設反対派は言葉を失い、対応に焦りを募らせる。一方、対抗馬の選考を済ませ準備が先行する政権側は「弔い合戦」で県民感情が高まるとみて警戒を強めた。

▼時間的猶予

 「ショックだ。どうしていいか分からない」。知事与党の県議の一人は八日、言葉を詰まらせた。翁長氏を支援する政党、団体などでつくる「オール沖縄会議」関係者は「候補者擁立に向けた対応を協議しないといけない」と頭を抱えた。

 オール沖縄会議は、翁長氏の再選出馬を見据え準備を進めてきただけに、一から対応を迫られる形になった。翁長氏の任期満了を前提に十一月十八日投開票の日程が決まっていた知事選は前倒しされ、新基地反対派にとって時間的な猶予は限られる。

 後継候補の一人と目される謝花喜一郎(じゃはなきいちろう)副知事は八日夕に記者会見し、翁長氏が意識混濁だとした上で、自身が知事の職務代理に就いたと明らかにした。二度目の夜の会見で後継について問われると「私は聞いていない」と述べるにとどめた。

▼県民感情

 知事選を巡り自民党は、翁長氏が四月、膵臓に腫瘍が見つかったと公表したのを踏まえ、対立候補の選考を急いできた。七月上旬には宜野湾市の佐喜真淳(さきまあつし)市長に出馬を要請。佐喜真氏は同三十日に受諾した。県内経済界の関係者らの支援も得て、選挙への準備を着々と進めている。

 翁長氏の死去に伴う選挙日程の前倒しにも「こちらは準備ができている」(自民党幹部)と、情勢に影響はないと表向きは強調する。翁長氏が当選した二〇一四年十一月以降、対決構図となった八市長選で政権側は、支援候補が七勝一敗。巻き返しを図ってきた。

 だが今回の知事選は、新基地反対の運動を主導してきた翁長氏の後継を決める選挙の色合いを強めるのは確実だ。首相周辺は「『翁長氏の遺志を無駄にしてはならない』という県民感情が盛り上がるのは間違いない。相当、厳しい戦いになる」と予測する。

米軍普天間飛行場の移設工事が続く沖縄県名護市辺野古の沿岸部=6日(小型無人機から)

▼方針不変

 新基地建設を巡っては、防衛省沖縄防衛局が早ければ今月十七日にも辺野古沖に土砂を投入する方針を県に通知。政府関係者は「移設方針に変わりはない。投入時期は県の出方を見て判断する」と話した。

 翁長氏は土砂投入の動きに対抗し七月下旬、前知事が決定した埋め立て承認の条件に違反しているとして、承認を撤回する方向で手続きを始めると表明していた。

 県は九日、承認撤回に向けて沖縄防衛局に対する聴聞を実施する。政府も予定通り担当者を出席させる考えだ。

 埋め立て承認撤回は、土砂投入前に翁長氏が正式に決定するかどうかが焦点だったが、翁長氏は撤回時期について明言していなかった。

 謝花氏は会見で「職務代理の権限は、地方自治体の長の職務権限全てに及ぶ」として、翁長氏に代わって撤回を決めることは可能だと説明した。

 翁長氏の死去に伴い、県が実際にどう判断するかも課題となる。自民党の閣僚経験者は「民意を得ていない副知事が本当に撤回を決められるのか」とけん制した。

 

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