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<核なき世界目指して> (4)日本主導で「非核地帯」を

政治

2018年7月12日 朝刊

長崎大核兵器廃絶研究センター客員教授・梅林宏道さん

 −六月の米朝首脳会談で署名した共同声明は、北朝鮮の非核化への道筋が具体的に書かれなかった。

 「完全で検証可能、不可逆的な非核化(CVID)が明記されず、漠然としているという議論があるが、北朝鮮からすれば『安全の保証』も検証可能で不可逆的である必要がある。現時点では、非常にバランスのとれた妥当な合意だ。どっちが得した、損したということではない」

 −非核化の行方は。

 「ステップ・バイ・ステップ(一歩ずつ)でいくしかない。北朝鮮は、公開した施設以外で(核兵器に利用可能な)ウラン濃縮をしている可能性がある。まず現状の把握が必要だ。次のステップとして無能力化、最後に(核兵器や施設の)解体がある。その間に多様なギブ・アンド・テークがある。米朝で行程について協議するのだろう」

 −長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA)は「北東アジア非核兵器地帯」を提言している。

 「南北朝鮮と米国の非核化努力には、中国、ロシアを巻き込まざるを得ない。北朝鮮は米国からの安全の保証と同時に、在韓米軍を含めて韓国の検証可能な非核化を求めている。米国の核抑止力は、中ロにも働いていた。在日米軍も北朝鮮や中ロへの抑止力なので、日本も組み込まれるのが自然だ」

 −日本の役割は。

 「日本は北朝鮮の脅威を強調し、核不拡散を訴えてきた。不拡散だけでは軍縮は進まず、核拡散防止条約(NPT)は空洞化している。朝鮮半島を巡る核状況が好転したとき、日本は核不拡散から核軍縮にかじを切る役割を果たすことができる。先取りして、被爆国として非核兵器地帯を提案すべきだ」

 −日本も米国の核の傘から外れるべきか。

 「周辺国は、日本が核の傘から外れると核武装すると考えてきた。だが非核兵器地帯にすれば、日本は核武装をしないことを法的に約束し、核保有国も日本に対して核攻撃しないという仕組みに入っていく。非核兵器地帯条約交渉を進めることは、北朝鮮との国交正常化の促進にもなる」 (聞き手・大杉はるか)

 =おわり

<うめばやし・ひろみち> 1937年、兵庫県生まれ。東京大大学院修了。大学教員などを経て、2008年からNPO法人「ピースデポ」特別顧問。12年に発足した長崎大核兵器廃絶研究センターの初代センター長を務めた。

<北東アジア非核兵器地帯> 元米大統領特別補佐官のモートン・ハルペリン氏が最近では提唱し、長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA)が2015年「提言」として構想をまとめた。日本、米国、韓国、中国、ロシア、北朝鮮の6カ国が、北東アジアを非核化する条約締結を目指す。この地域での核配備を禁じ、核攻撃をしない安全を保証する。現在、南米や東南アジアなど5地域で非核兵器地帯条約がある。

 

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