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被災しても旅の思い出を 外国人にゲストハウス開放 札幌のオーナー

社会

2018年9月12日 夕刊

7日夜、外国人観光客の避難者らを受け入れたゲストハウス「waya」で、笑顔で写真を撮る避難者や宿泊客ら=札幌市豊平区で(柴田涼平さん提供)

 最大で震度7を記録した北海道南西部の地震では、正確な情報や避難先が分からず困惑した外国人観光客が多かった。そんな中、札幌市内のゲストハウスは六日の地震発生直後からリビングを無料開放し、行き場のない外国人観光客らを受け入れた。朝昼晩の食事を無料で提供し、夜にはイベントを開催。避難者に安心と笑顔を与えた。 (福岡範行)

 札幌市豊平区のゲストハウス「waya」のオーナー柴田涼平さん(26)は六日未明、スタッフの送別会を市内で開催中に地震に遭った。道内全域が停電する中、急いでwayaに戻って無事を確認し、寝つけないまま朝を迎えた。

リビングを無料開放した当時の様子を話す柴田さん。大量の野菜も届けられた

 繁忙期で六日以降も予約はいっぱいで、延泊できない客もいたほど。だが、停電や断水などで他の宿も軒並み受け入れを止めていた。「居場所がない人が目の前にいるのに、見捨てられない」とリビング滞在を促した。市内の系列店「yuyu」も同じ対応をしていると聞き、同日午前、宿泊客以外にもリビングを開放すると会員制交流サイト(SNS)で告知した。

 情報を聞きつけ、小学生を連れて台湾から旅行中だった観光客十二人が訪ねてきた。この日に帰国予定だったのに、飛行機が飛ばない。日本語や英語に不慣れで情報収集が難しく、いつ帰れるか分からずにいた。

 午後四時に電気が復旧。夜、ロック音楽に合わせてうどんを手打ちし、無料で振る舞うイベントが始まると、彼らは笑顔を見せ始めた。イベント中にwayaの中国人スタッフが合流すると、和らいだ表情に。徹夜で対応し続けていた柴田さんは「その顔を見て疲労が吹っ飛んだ」と振り返る。

 無料開放は七日夜も続け、短編映画を上映したり、ギターの弾き語りをするパーティーを開いた。「『被災したけど、いい思い出ができた』と思って帰ってほしかったから」。知人の農家が東京に出荷できないトマトを大量に届けてくれ、インターネットを通じた寄付が集まるなど、支援も広がった。

 一方、宿泊のキャンセルも相次いだ。キャンセル料は取らず、空いたベッドを避難者に提供したため、経営には響いた。「全国で同じような災害が起きた時、支援したくても、金銭的に余裕がないゲストハウスもあるだろう」。そう考え、構想中だったゲストハウス基金を絶対に作ると決意した。全国のオーナー同士で金を積み立て、被災者支援にかかった費用を補う仕組みだ。

 柴田さんは「ゲストハウスは言葉も文化の違いも知っているから、外国人も受け入れやすい。全国に千軒以上あるゲストハウスを誰もが帰れるセーフティーネットにしたい」と語った。

 

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