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土の中に母の顔 危険、掘り起こせず

社会

2018年9月7日 朝刊

 震度7を観測し、三十人近くの住民の安否が分からなくなっている北海道厚真(あつま)町。避難所の厚真中央小学校では家族の無事を祈る人々が不安な夜を過ごしていた。

 吉野地区の会社員中田匠(たくみ)さん(32)は自宅の二階で寝ていたところ、下から大きく突き上げられるような揺れで跳び起きた。「ドーンと大きな音が聞こえ、気がついたら家が土砂に押されて流されていた」。裏山が崩れ、土砂によって家は十メートルほど押し流され、一階は完全に土で埋まったという。一階には父親の守さん(64)と母親の靖子さん(62)が寝ていた。「大丈夫か」と寝室に向かって声を張り上げたが、返事はなかった。

 同じ二階で寝ていた姉(33)と兄(35)は無事。夜が明けてから、ヘリコプターで救助され、近くの小学校に三人で避難した。

 両親の行方は分からないまま。「今は何も考えられない。父と母が早く見つかることを祈るだけです」と憔悴(しょうすい)しきった表情で語った。

 避難所には靖子さんの妹の林崎(りんざき)郁子さん(57)と夫の博巳さん(57)=北海道苫小牧市=の姿もあった。厚真町幌里(ほろさと)地区には博巳さんの八十代の両親が二人で暮らす。実家の一階の寝室は土砂でほぼ埋まっていた。持ってきたスコップで数時間にわたって懸命に土を掘り起こすと、土の中から母親の顔が見えた。「レスキュー隊の人に『(余震の恐れもあり)もう危ない』と言われて離れたが、何とか掘り起こしてあげたかった。父と妻の姉夫婦も見つかっていない。言葉にならない」と涙を流した。 (榊原智康)

 

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