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<地域のチカラ>石川・加賀 限界集落 世界の若者集う

社会

2018年9月3日 夕刊

二枚田昇さん(左)の指導を受けながら畑の手入れをする学生たち=いずれも加賀市山中温泉大土町で

 赤瓦に、いろりの煙出し付き屋根がある二階建ての家屋−。独特の山村風景が残る石川県加賀市山中温泉大土(おおづち)町は、住民わずか二人の限界集落だ。ここに近年、日本の「原風景」を求めて世界中から若者が訪れ、農業や炭焼き、時には崩れた路地の石垣修復に汗を流す。国の重要伝統的建造物群保存地区に選ばれている集落の景観維持に、国境を越えた若い力が一役買っている。 (小室亜希子)

◆失敗しながら学ぶ

 八月二十三日まで九日間の日程で集落を訪れたのは二十人余り。台湾の学生を中心に、浜松市の高校一年兼子和花奈さん(16)、名古屋市で働くタイ人男性(30)らだ。国際ボランティア団体「NICE」(東京都新宿区)を通じて参加した。

 築八十年の古民家二棟に宿泊しながら、畑や棚田の手入れ、集落の草刈りに取り組む。仕事が終わると、順番にドラム缶の五右衛門風呂に入り、夜は酒を飲みながら語り尽くす。英語や日本語、台湾語が飛び交った。

 地区住民の二枚田昇さん(65)が作業を指示するが、最低限しか伝えない。「畝(うね)を作って」と頼んだら、似ても似つかない土の山が出来上がったことも。「失敗しながら学ぶ。みんな楽しみながらやってますよ」と二枚田さんは笑う。

いろりを囲んで、イノシシ肉の焼き肉を味わう学生たち

◆リピーターも

 大土町は山間部にある山中温泉の中心街から、さらに車で三十分ほどの山奥にある。かつて炭焼きが盛んに行われ、十軒ほどの民家が残るが、現在の住民は二枚田さんと母親(87)のみ。二枚田さんは五十歳ごろから棚田を復活させようと、当時住んでいた山代地区から通った。「自分一人では限界がある」と感じていた時にNICEを知り連絡。二〇一三年七月から、働きながら合宿するNICEの「国際ワークキャンプ」を受け入れている。

 夏、冬の一定期間や週末だけの短期でも受け入れ、これまで二十三カ国、延べ四百人の若者が、大土町での暮らしを体験した。今回が二回目の台湾人、寥禹〓(リャオユウェン)さん(20)は「日本の伝統的な暮らしを学べ、自然もいっぱい。人も温かい」と魅力を語る。

 「のぼさん」と慕われる二枚田さんは「本当に助かるし、見ているだけで楽しい」と笑顔で語る。「定住人口を増やすのは難しいが、交流人口なら可能性がある。いずれ組織として受け入れ態勢を整え、地域おこしの一つのヒントを示すことができれば」

<限界集落> 65歳以上の高齢者が人口の半数を超え、冠婚葬祭や農業用水の維持管理など社会的共同生活の維持が困難な集落。大野晃・高知大名誉教授が命名した。山村、離島など全国1028市町村の7万5662集落を対象にした国の調査(2015年)では、65歳以上が50%以上の集落は1万5568カ所あった。「限界集落」の呼称は、危機感を強調して使われることが多いが、総務省過疎対策室は「そこに暮らす住民に刺激が強い呼び方で、国では使用していない」としている。

※〓は、雨の下に文

 

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