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学校で石綿、遺族逆転敗訴 「基準超える量、証明ない」

社会

2018年8月30日 朝刊

四條昇さんの遺影を前に、「判決には怒りしかない。救済が認められるまで頑張る」と声を震わせる妻延子さん=29日、東京・霞が関の司法記者クラブで

 かつて勤務していた埼玉県の小学校でアスベスト(石綿)にさらされ、中皮腫を発症し死亡したとして、小学校教諭四條昇さん=当時(54)=の妻が、公務災害と認めなかった処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は二十九日、請求を棄却した。一審は地方公務員災害補償基金の処分を取り消し、公務災害と認めていた。妻側は上告する方針。

 斉木敏文裁判長は、校舎の建材に石綿が含まれていたと認定した上で「労働安全衛生法の基準を超える量の石綿にさらされたことが証明されていない」と判断した。二〇一六年七月の一審さいたま地裁判決は「長期間、日常的にさらされていた」とし、公務災害と認めていた。

 判決によると、四條さんは一九八〇〜八八年、埼玉県戸田市立喜沢小に勤務。〇七年四月に中皮腫と診断され、同五月に死亡した。遺族は基金に公務災害の認定を求めたが、認められなかった。

 判決後に東京都内で記者会見した妻延子さん(66)は「きちんとした救済を求め、認められるまで頑張る」と話した。基金は「妥当な判決」としている。

◆「司法が救済の道狭める」

 二十九日の東京高裁判決は、国の労災認定にはない基準を持ち出し、教諭の公務災害を認めない結論を導いた。石綿被害の労災認定が全国で進むが、遺族側は「司法が救済の道を狭めようとしていないか」と疑問を口にした。

 「石綿を何本吸ったかなんて誰も証明できない。やっと明るい先が見えたのに、シャッターを閉められた思いです」。判決後、東京・霞が関の司法記者クラブであった記者会見。教諭だった夫の四條昇さんを中皮腫で亡くした妻延子さんは悔し涙を浮かべた。

 判決が公務災害と認めない理由に挙げたのは、労働安全衛生法の基準を超える「量」の石綿を浴びた証明がないことだ。

 しかし、厚生労働省によると、労災認定基準には「量」は含まれず、石綿がある環境下で働いた「期間」が重視される。石綿が頻繁に使われたのは一九五〇〜七〇年代と古く、量の証明は困難で、認定基準になじまないためだ。期間については、中皮腫の場合、原則一年以上が労災認定対象。四條さんは、石綿が使われた小学校で約八年働いた。

 二〇一六年度に石綿被害に伴う千百九件の労災申請が出され、千五十七件が認定されるなど、毎年千件ほどが認められている。

 南雲芳夫弁護団長は「高裁は厚労省の基準以上のものを遺族に要求した。量の証明が求められるようになれば、労災認定される人はいなくなる」と危ぶんだ。 (蜘手美鶴)

 

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