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視覚障害者を“QRコード”が音声ナビ 東京メトロ実証実験

社会

2018年8月24日 夕刊

駅構内にある点字ブロックに貼られたQRコードを読み込むスマホのアプリ=東京都江東区の東京メトロ有楽町線辰巳駅で(圷真一撮影)

 東京メトロが、駅構内の点字ブロックにQRコードを表示したシールを貼り、視覚障害者に音声で案内する実証実験を始めている。スマートフォンのカメラで情報を読み取り、音声で案内する仕組み。QRコードを用いた連続的な道案内システムは世界初の試みという。ただ、視覚障害者団体からは「歩きスマホは危険ではないか」と懸念する声も上がっている。 (増井のぞみ)

 視覚障害者が実際に歩いてみる実証実験は、今月六日に有楽町線辰巳駅(東京都江東区)で行われた。十センチ角のQRコードのシールは、駅構内の点字ブロックのうち、方向転換や近くに障害物があることを知らせる「警告ブロック」の上に設置。一カ所に四〜八枚、計二百枚を貼った。

 実験では、全盲の松尾政輝さん(24)がホームでスマホの専用アプリを起動し「1番出口」と目的地を設定。点字ブロックの上を白杖(はくじょう)をつきながら、スマホを手に、カメラをオンにしたまま歩く。QRコードに近づくと、「この先改札。右折、三メートル前進」などと音声が流れた。日ごろからスマホをよく使う松尾さんは「なじみのない駅でも、安心して安全に動ける」と感想。

QRコードをスマートフォンで読み込み駅構内を歩く松尾政輝さん=東京都江東区の東京メトロ有楽町線辰巳駅で(圷真一撮影)

 一方、NPO法人「視覚障害者サポート・ゆい」理事長で全盲の織田洋さん(64)は「白杖をつきながらの歩きスマホは危険ではないか」と心配する。

 近年、歩きスマホによる事故が増え、鉄道各社も注意を呼び掛けているが、東京メトロの広報担当者は「一見、歩きスマホに見えるかもしれないが、目的地を設定すればスマホの操作は不要」と説明。歩きスマホには当たらないとの認識だ。あくまで実験である点を強調し、「両手がふさがらないよう、スマホを腕や腰に固定する工夫もできる。寄せられた意見を踏まえ、技術的な課題を解決していきたい」と話している。

 東京メトロは、実証実験を本年度中続け、参加する視覚障害者を募集中。参加人数の目標は「三ケタ」で、現在は約三十人が応募している。今後、実験の結果を踏まえ実用化を検討する。

 日本盲人会連合情報部長で強度の弱視の三宅隆さん(45)は「耳の感覚が頼りのホームで使うと注意力が奪われるし、混雑した駅で立ち止まると人に衝突する」とスマホ利用のリスクを指摘するが、視覚障害者の安全を目指す取り組み自体は歓迎する。「駅で頼りになるのは誰かに聞くことだけど、人が少ない駅もある。そんな駅のコンコースで、(何らかの形で)方向だけ示してくれるとかなり助かる」と話した。

 

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