XMenu

どこに逃げれば… 江東5区水害避難計画 住民「域外」に戸惑い

社会

2018年8月22日 夕刊

ゴムボートを使った避難訓練の様子を説明する中川栄久さん=東京都葛飾区で

 一体、どこに逃げれば−。西日本豪雨の記憶も新しい二十二日、東京都東部の江東五区(墨田、江東、足立、葛飾、江戸川)による協議会が示した大規模水害広域避難計画は、最悪の事態には二百五十万人に区域外への退去を呼び掛ける方針が盛り込まれた。高層住宅の住民も例外ではない。逃げる先の確保は各自に任され、下町の住民に困惑が広がっている。 (神野光伸、加藤健太)

 「万一に備えて食料を備蓄するつもりだが、長期間孤立すれば心身共に持ちそうにない」。江東区南砂の十四階建てマンションの七階で夫(78)と暮らす渡辺秀子さん(81)は、自宅近くでは浸水被害が二週間以上続くという想定を聞き、ショックを隠せない。軽度の糖尿病で、薬が切れる不安にもおびえる。

 七階までは水は到達しそうもないがライフラインが途絶える恐れから、原則、協議会は区外への避難を呼び掛ける。だが、渡辺さんには、水没の危険性がある江東区北砂のマンション一階の長男宅以外に身を寄せる場所はない。

 北砂の十五階建てマンションの十二階に住む女性(69)も、「近くに避難できる親戚宅などはない。万一の際は腹をくくるしかない」と話した。

 「受け入れ先が決まっていないのに避難しろと言われても。どこに行けばいいのか」。一軒家が多い葛飾区東新小岩七丁目町会の中川栄久会長(82)も、協議会の広域避難の方針に戸惑いを見せた。想定では、七丁目は三メートル以上の浸水が二週間以上続くとされた。

 中川さんは「広域避難は理想だが、現実的ではない」と大変さを口にする。町会では八年前、大規模水害を想定した訓練を独自に実施し、百五十人で、隣接する千葉県松戸市に電車と徒歩で避難を試みた。だが、車いすが通れない箇所があったり、途中でトイレに行く人がいたりと、苦労が多かったという。

 そうした経験から、町会は、足の悪い高齢者らが高い建物にとどまる「垂直避難」のケースも出てくると分析。助けに行ったり、物資を届けたりできるようにエンジン付きのゴムボートを二隻購入し、水に浮かべて定期的に訓練してきた。

 中川さんは協議会に対し「まずはどこに避難すればいいのかを明確にしてほしい」と求めた。

 

この記事を印刷する