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原発被災者の1週間、芝居に 福島の劇作家「問題解決していない」

社会

2018年8月18日 夕刊

 東京電力福島第一原発事故により、放射線量が高い街で屋内退避を強いられた夫婦の一週間を描いた劇団青年座の二人芝居「ぼたん雪が舞うとき」が、二十二日から東京都内で上演される。劇団代表の森正敏さん(65)は「事故の記憶が薄れつつある今、自分の身に起きたようにリアルに考えられる舞台にしたい」と話す。

 原作を書いたのは福島県いわき市在住の劇作家高木達(とおる)さん(68)。第一原発から三十キロ圏内に住んでおり、原発事故当時は二十キロ圏内に避難指示が出たため、危険を感じて妹夫婦の車で故郷を脱出した。一方で同県内の各地では、避難の情報も十分に入らない中で高齢世帯が取り残され、支援物資や助けもなく孤立して厳しい状況に追い込まれたケースも多かった。そうした現実を基に、物語を仕上げた。

 高木さんの原作を基にして三人の演出家がそれぞれ台本をアレンジ。夫婦役の俳優三組が上演期間中に日替わりで演じる。各チームの演出家と役者が稽古場で議論しながら舞台をつくり上げた。

 三つの舞台はいずれも「原発がある日本のどこかの街」との設定で、うち二つは福島の原発事故直後、一つは事故から八年後の物語とした。登場する夫婦は、それぞれ五十代、六十代、七十代と世代が異なる。「いつでも、どこでも誰にでも起こり得る物語」として、多くの観客に受け止めてもらう狙いという。

 いわき市は今春、今後の原発事故に備えて原子力災害広域避難計画を各家庭に配ったが、高木さんは「高齢者や障害者など避難弱者の問題は解決していない」と書き下ろしの動機を話す。

 放射線量が減ったとして国は被災地の放射線監視装置(モニタリングポスト)を順次撤去する方針を示したが、高木さんは「廃炉の過程で事故や放射能漏れもあり得る。危機意識の差は大きく、東京などの都会で警鐘を鳴らしたい」と言う。

 九月二日まで、世田谷区の「小劇場B1」で上演。一般四千五百円、二十五歳以下三千円。各組の公演日時など問い合わせは青年座=電03(5478)8571=へ。 (五十住和樹)

 

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