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自分の一つの芯 直せばいいは苦しみ助長 キャンベルさん発言に共感 ネットで広がる

社会

2018年8月17日 朝刊

 インタビューやブログを通じて性的少数者(LGBT)への無理解を露呈した政治家の発言を批判し、自身の性的指向を公表した日本文学研究者のロバート・キャンベルさん(60)に対し、共感や感謝する声がインターネットで広がっている。

 ツイッターでは「この気持ちを公にしてくれてありがとう」「皆が生きやすい国になってほしい」といった投稿が相次いだ。LGBTの当事者だけではなく、さまざまな困難を抱えた人、そうした人に共感し、支援したいと考える人も声を上げているようだ。

 キャンベルさんは「それぞれ思い思いの立場で考えを深めるきっかけになりつつあるのではないか」と歓迎している。

 キャンベルさんは14日の共同通信のインタビューで自身が同性愛者であることを明かした上で「(性的指向は)自分の中に通底する一つの芯のようなもの」「『直せばいい』という論理は多くの人の苦しみを助長する」と語った。インタビューに先立って公開されたブログでも「ふつうに、『ここにいる』ことが言える社会になってほしい」などとつづっていた。

<インタビュー詳報> 

 日本文学研究者のロバート・キャンベル東京大名誉教授のインタビュー詳報は次の通り。

 ×   × 

 杉田氏の寄稿を読み、こういうことを政治家が書くことに幻滅し危惧も感じ、何か言わなければいけないと思いました。

 谷川氏の発言と杉田氏の文章に共通するのは「性的指向」への誤解です。杉田氏は最初、性的指向のことを書いていたのに途中から「嗜好(しこう)」の話にずれ、混同させるように書いています。日本語ではたまたま同じ音ですが、これらは全く違うものです。杉田氏は、女子校での女性同士の恋愛を例に、それは「疑似恋愛」で「一過性」だから、そのままだと「不幸」だと言います。「性的指向」が努力で変えられると思っているようです。

 この意見は、性的指向を「矯正」しようとして多くの人生をずたずたにした、かつての「転向療法」の論理に直結します。LGBTが不幸だとすれば、おのずからではなく、社会や教室、家庭などでその人が出会う一つ一つの場面に人を不幸にする要因があるのです。

 同性婚を認める国が増えてきました。だから日本も認めるべきだと言いたいのではありません。ただ同性婚が社会にどういうメリットや、あるいは損失をもたらすのか。今回は悲しい発言でしたが、私の発言も含めて、一緒に考えるきっかけになればいいと思います。

◆議論と合意

 日本社会はLGBTをやんわりと遠巻きに見ていて、表だって公認しない。当事者一人一人の可能性を閉じ込め、開花させない力が働いているというのが私の観察であり実感です。

 十年、二十年先のことは分かりません。私が病気をして亡くなったら、パートナーはどうなるか。財産だけではなく、長い年月をかけて築いた関係性、思いといったものも彼には受け継いでほしい。しかし、日本では同性パートナーが介護や治療の判断に関与しにくく、亡くなった際の儀式に意思を反映させることも難しい。

 結婚が全てではありません。それでも同性婚をどう考えていくか、日本らしい議論と合意を政治的プロセスにのせる道筋をみんなそろそろつくっていく時期ではないか。

 私はゲイで、二十年近く日本人のパートナーと共に過ごしてきました。知人や友人、同僚にもオープンです。でも公的な言論の中で明言はしてこなかった。私は一つの属性によって片付けられたくない、規定されたくないと思っていたから。でも今回、性的指向や性自認についての大きな誤解が波及していくと感じ、自分の立場から批評することが重要だと思った。

◆小さな成功

 パートナーとは、私が二〇一一年に重い病気をしたことをきっかけに、その後、同居するようになりました。去年八月には米国の父の元で結婚式を挙げました。父が「どうして結婚しないの?」「もう一人息子がほしい」って言うんです。友人や妹が遊びに来てくれ、こぢんまりとした式でしたが、父はすごく喜んでくれた。

 私は十二、十三歳ごろから自分の性的指向を自覚し、葛藤することはなかった。「変えたい」とか「不幸だ」という言葉にリアリティーは感じません。私にとっては「嗜好」じゃない。では何なのか。掘り下げて考えてみると、自分の中に通底する一つの芯のようなものだと思ったんですね。人と関係を結んでいく面白さ、いとおしさ、むなしさ、奇跡のようなときめき、私の判断や感性、言葉の全てに行き渡っている。

 今、各地で同性パートナーシップ制度が広がっています。上意下達ではなく、小さな成功の実感が広がり、一つ一つの出来事から物事が変わっていくことがある。遠くない将来、政治家や立法に関わる人も無視できなくなると思う。 (談)

<ロバート・キャンベルさん> 1957年米ニューヨーク生まれ。85年に来日し、九州大専任講師、東京大大学院教授などを経て、国文学研究資料館の館長に就任。東大名誉教授。専門は近世・近代日本文学。テレビのコメンテーターとしても活躍する。

 

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