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「9条の精神 全人類に」 憲法理念訴えた元米兵死去

社会

2017年10月6日 夕刊

ことし4月、米ペンシルベニア州を訪ねた「第9条の会・オーバー東京」の花岡蔚さん(右)と会い、笑顔を見せるチャールズ・オーバービーさん=花岡蔚さん提供

 日本の憲法九条の理念を世界に広げようと活動した元米兵でオハイオ大名誉教授のチャールズ・オーバービーさんが、九月に亡くなっていたことが分かった。九十一歳だった。日本の市民団体メンバーには今春、「九条の精神は全人類に不可欠」と話していた。くしくも衆院選は憲法問題が争点の一つ。メンバーらは、「オーバービーさんの遺志を継ぐ」と誓う。 (辻渕智之)

 訃報は、長女から「第9条の会・オーバー東京」の花岡蔚さん(74)=埼玉県狭山市=にメールで届いた。米ペンシルベニア州の高齢者施設で先月十八日に亡くなったと伝え、「朝鮮半島の情勢が父を苦しめていた」とも書かれていた。

 元米軍のパイロット。沖縄の基地から朝鮮戦争に出撃した。中部大(愛知県)の客員教授だった一九八〇年代、広島の原爆資料館を訪ね、戦争の過ちを痛感。館から外に出るや、しゃがみこみ、頭を抱えたという。一方で、戦争放棄と戦力不保持を明記した九条を知り、「戦争の業火(ごうか)から生まれた永久の真理、いわば不死鳥だ」と感銘した。

 米国で九一年に「第9条の会」を創設した。日本国内の文化人らによる別団体「九条の会」発足よりも十年以上早かった。呼応して東京や名古屋など日本にも会ができ、来日して講演や交流に励んだ。被爆して十二歳で亡くなった佐々木禎子さんと九条への思いをプリントした色紙で折り鶴を自作し、会う人に贈った。近年は、九条の理念を米国憲法に修正条項で盛り込むべきだと訴えていた。

 花岡さんは今年四月に米国で会い、「九条を大切に守るだけでなく、世界に広げてほしい」との言葉を託された。

 しかし、今月十日に公示される日本の衆院選では自民党が「自衛隊の明記」を含む改憲を公約。小池百合子東京都知事が率いる希望の党も六日に発表した公約で、九条を含め改憲論議を進めるとした。「自衛隊が九条に書き込まれたら、既に実質的には軍隊なのに、形式的にも完全な軍隊となってしまう」と危ぶむ。

 花岡さんは米国でも勤務した元銀行マン。退職後は「楽団ひとり」と自称し、各地で楽器演奏をして自作の「平和音頭」も歌う。八日にも狭山市内のイベントに出演する。「オーバービーさんの功績を紹介し、原爆の炎と死の灰の中から九条が生まれたと伝えたい」

 「オーバー東京」事務局の和田隆子さん(78)=東京都杉並区=も「憲法の一番の軸をどうするか。今度の衆院選で市民はちゃんと考えて判断しなければと思う。訃報にくじけず、遺志を継ぎたい」と話した。

 

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