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「情報漏れるおそれ トイレを別に」 横浜市で記者隔離要望

社会

2017年4月21日 朝刊

「記者用のトイレを分けるべき」などと書かれた市政策局の要望書

 横浜市が二〇二〇年の移転を予定する新市庁舎整備を巡り、米軍基地対策などを担う市政策局が「記者用のトイレを分けるべき」だと庁舎整備担当に要望していたことが分かった。記者室が同局と同じ階にあり、トイレで出入り業者などが交わした会話が取材の端緒になる「おそれ」があることを理由としている。本紙が情報公開請求で入手した市の文書に記載されていた。同局は、取材に「不適切だった」として、要望を撤回した。 (志村彰太)

 新庁舎整備担当の市総務局は昨年六月、各局に、レイアウトの原案を提示。その際、修正が必要か要望書の提出を求めていた。

 案では、政策局は記者室と同じ九階に配置されている。同局は米軍根岸住宅(中区など)や横浜ノース・ドック(神奈川区)など、市内米軍施設返還後を想定した街づくりを計画する基地対策課のほか、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致の可能性を検討する政策課などで構成する。「秘匿案件の多い部署」(市幹部)という。

 同局は「情報管理の面から、記者用のトイレを分けるべき」だと要望書に記載。「苦情申立に来庁した市民や業界関係者等の言動を記者が聞きつけ、取材につながるおそれ」があることを理由とした。「内密に進めるべき案件を抱える部署が多く、…記者室との近接配置には問題がある」とも記されていた。

 政策局総務課の中島隆雄課長は「情報漏えいを心配した基地対策課と政策課から同じ意見が出たので記載した」と説明。本紙の「記者を隔離して、情報を隠そうとしているのか」との質問には、「そういう意識はなかった。良いことも悪いことも説明責任を果たすよう、認識を改めたい」と返答した。

 渡辺巧教(かつのり)副市長は取材に「政策局を厳重注意した」と話した。政策局と記者室は原案通り、同じ九階に入り、トイレも共通になる予定。

 新市庁舎は、現庁舎の老朽化などを理由に、一キロ離れた場所に八月に着工する予定。地下二階、地上三十二階建てで、建設費用は約六百七十九億円の見込み。

◆「情報は市民のもの」意識欠ける 専修大・山田健太教授

 役所内での記者の取材を巡っては、経済産業省が二月下旬に「情報管理の徹底のため」として全ての執務室を施錠し、自由に出入りできなくした。守秘義務を理由に取材制限する動きが広まることに、専修大学の山田健太教授(言論法)は「役所の情報は市民のものだという意識が、公務員に欠如している」と批判する。

 山田教授は「個人情報保護法や特定秘密保護法が背景にある」と分析。「守秘義務の大義名分に便乗し、全国的に行政が閉鎖的になっている。国民がメディアに厳しくなっている風潮もあり、記者を締め出す対応をしても許されると思っているのだろう」と話す。

 「トイレを分けるべきだ」との主張は「記者が邪魔者という意識の表れ、説明責任の意識がなく、あまりにも幼稚」とあきれる。「透明化を進めて、意思決定過程も含めて公開するという望ましい方向とは明らかに逆行している」とする。

 その上で「情報公開法などの法や制度を充実させて、知る権利を担保するしかない。メディアも厳しく行政をチェックすべきだ」と述べた。

 

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