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<法律お助け隊 君和田伸仁弁護士> 退職したいが「損賠請求する」と会社

悩みの小部屋

2018年6月2日

<お悩み> 今年3月に1年間の有期契約社員として、イベント企画会社に就職しました。しかし長時間労働が続き、休みもほとんど取れず、体調が悪くなりました。退職を申し出ると、会社は「代わりが入社するまで退職は認められない。もし退職するなら、損害賠償を請求する」と言います。代わりの人が入社するまで退職できないのでしょうか。 (東京・会社員 30代)

◆過失なければ払う義務なし

<お答え> 最近の人手不足の状況で、会社が労働者の退職を認めないと言ってくるケースが目につきます。

 期間の定めのない無期労働契約の場合、二週間前に解約を申し入れれば、自由に退職できます(民法六二七条)。有期労働契約の場合は「やむを得ない事由」があれば直ちに解約できます。しかし、その事由が一方の当事者の過失で生じた場合は、相手方に損害賠償をしなければなりません(民法六二八条)。ただし契約期間が一年を経過した後は、労働者はいつでも自由に退職できるのが原則です(労働基準法一三七条)。

 「やむを得ない事由」は、就業環境、労働者の健康、生活環境などの観点から決められます。あなたの場合、休みも取れない長時間労働で体調を崩したのですから、「やむを得ない事由」にあたるといえます。またあなたに過失はなく、むしろ会社側に過失があると評価できます。よってあなたが損害賠償義務を負うことはありません。

 逆に病状が重篤で、長期にわたって働けなくなった場合は、会社に損害賠償(契約の残期間の賃金相当額)を請求することも考えられます。

 なお「やむを得ない事由」が無いのに退職を申し出て、以降実際に就労しなかった場合はどうでしょう。労働者の意に反し、労働を強制できません。よって損害賠償の問題として処理されます。一方、社員の入退社は通常想定されるので、一人が退職しただけでは会社に損害は生じません。なので損害賠償が認められることはほとんどありません。

 損害賠償が認められるのは、退職で業務に多大な支障が出ることが予測されるなか、あえて突然退職するといった例外的な場合に限られるでしょう。

 

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