XMenu

シルバー人材、派遣で事業所へ 「プチ勤務」で活躍の場拡大

暮らし

2018年9月5日

注文書を見て商品を選び、発送準備をする青木博さん(左)=名古屋市昭和区で

 働くシニア世代の活躍の場が増えている。いまや労働力人口の約12%をシニア世代が占め、短時間のパートなどで「プチ勤務」する人も増えてきた。企業からの引き合いも強まり、シルバー人材センターから派遣されて会員が企業に通勤するケースも増えている。働き方の幅が広がり、会員たちのセカンドライフを一層充実させるのにも役立っている。 (細川暁子)

 名古屋市昭和区の青木博さん(74)は、五月から漢方薬などを製造する同区の「松浦薬業」で働いている。愛知県シルバー人材センター連合会からの派遣だ。

 勤務は平日の午後一〜五時の四時間。若手の同僚七人と、配送センターで注文書を見て棚から薬を選び、箱に詰める。ほとんど立ちっぱなしで一日約三十箱を運ぶ。だが「若い人と一緒だと気持ちが若返り、働く意欲もわく」と話す。

 時給は、県の最低賃金の八百七十一円。同社は青木さんへの賃金とは別に、事務手数料を派遣元の県シルバー人材センター連合会に支払い、契約は三カ月ごとに更新される。

 以前、同社は派遣会社を通じて二十〜三十代のパートを雇っていた。だが、短時間で働いてくれる人は見つけにくく、シルバー人材センターなら短時間の希望者がいるかもしれないと連合会に連絡。製薬会社に勤務していた青木さんを紹介された。同社商品管理部の檜野(ひの)克弘さん(58)は「高齢者に派遣で働いてもらうという発想自体がなかった。実際に来てもらい、戦力になると実感した」と話す。

 青木さんは会員となって九年目。これまでは、一人暮らしの高齢者に電話で安否確認をするなど、自身と同じ世代の中での仕事が多かった。「現役世代の人たちと働くこと」がこれまでとの違いといい、「会社員時代に戻ったような緊張とやりがいがあります」とほほ笑む。

 シルバー人材センターは、自治体や一般家庭から清掃や家事などをセンターが受注し、会員が仕事に行くのが一般的。ただ、全国シルバー人材センター事業協会によると、この形で仕事をした会員は、二〇一二年度の約六十一万五千六百人から一七年度は約五十七万人に減った。

 一方、派遣で働いた会員は一二年度の約一万四千七百人から一七年度は約六万六千七百人と四・五倍に。内容はスーパーの商品陳列や保育園での保育補助などさまざま。センターが請け負うのは単発や月に数回といった仕事が多いが、派遣だと継続した勤務が多い。

 総務省によると、一七年の六十五歳以上の労働力人口(就業者と完全失業者の合計)は約八百二十万人で、十年前の約一・五倍。労働力人口全体に占める割合は12・2%で、十年前より4・0ポイント上がった。

 「シニアには、少しだけ働く『プチ勤務』を希望する人も多い。コンビニやホテルなどでは、午前五〜八時ごろの棚卸しや朝食準備の働き手を求めており、早朝から働けるシニアを採用する企業は増えている」。働き方の調査をしている「ジョブズリサーチセンター」(東京都)センター長の宇佐川邦子さんは言う。

 同社が三月、六十〜七十四歳の六千人を対象に実施した意識調査によると、現在仕事をしていない人の希望勤務時間は「四時間程度」が28・3%と最多。働きたい理由は「生計維持」が36・6%、「健康維持」が34・9%だった。

 宇佐川さんは「シニアには規則正しい生活や社会とのつながりを保つために少しだけ働きたいという人もいる。企業にとっては、短時間でも働いてくれる人材は貴重で、両者のニーズがマッチしている」と話す。

<シルバー人材センター> 主に市町村単位で、全国に約1300組織ある。会員登録できるのは原則60歳以上で、会員数は全国で計約72万人(3月末時点)。以前は会員の就労時間は週20時間程度とされていたが、高年齢者雇用安定法の改正により、都道府県知事が緩和を決めた業種の派遣は、2016年度から週40時間まで可能となった。

 

この記事を印刷する