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「無駄」知れば家事変わる 井田典子さんに聞く片づけの哲学

暮らし

2018年8月31日

キッチン横の食器棚の下部を文具や書類などを収納するスペースとして使っている井田典子さん=相模原市で

 毎月第4土曜日に生活面で「住まい彩り」を連載中の整理収納アドバイザー、井田典子さん(58)の著書「『引き出し1つ』から始まる! 人生を救う片づけ」が好評だ。発売から約半年で発行部数8万部を超えた。“スーパー主婦”と呼ばれる井田さんに、片づけの哲学ともいえる思いを聞いた。 (竹上順子)

 「伝えたいのは『片づけ術』のようなテクニックより、時間の使い方と、状況を客観視することの大切さ」と、井田さんは話す。

 家事に追われるのも、家が片づかないのも「無駄」が原因のことが多い。ただ、そのやり方に慣れてしまうと、無駄に気付かずにいる人が少なくないという。

 例えば、井田さんが相談を受けた若い母親は、食事の準備に時間がかかりすぎることに悩んでいた。物の配置に問題があるとみた井田さんは、台所の水切りかごの場所を変え、カウンターの上の物を片づけた。すると無駄な動きが減り、かかる時間も短縮できた。「歩数計を着けて、朝起きてから子どもを送り出すまでに千歩以上歩いている人は、動線を見直すといいですよ」と呼び掛ける。

 「取り込んだ洗濯物が片づかず山になる」という相談もあった。その日干した分をたたむのに、本人は二十分くらいかかると思い、やる気にならなかったというが、実際に時間を計ると所要時間は十分弱。「十分で済むと分かれば、すぐにできますよね」

 これらは数字で家事を客観視できた例だが、視覚で気付くこともある。「部屋の写真を撮ると『何でここにあるんだろう』と思う物や、ほこりをかぶっている物に気づきます」。部屋を「お客さん」の視点で眺めるのも効果的という。

 さらに「生活時間調べ」も勧める。雑誌「婦人之友」の読者でつくる「友の会」の会員らは五年に一度、朝起きてから夜寝るまで何にどれだけの時間をかけたのかを一週間にわたって計り、一日の平均を出す調査をしている。何に時間を取られているかが分かり、生活の見直しだけでなく、夫をはじめ家族の協力を求める際にも役立つ。特に男性には「忙しい」と言うより、数字を示した方が伝わりやすい。

 井田さんは一九八四年から調査に参加。自分の六回分を比べてみた。「面白いのは、子どもが一人で一歳だった時より、三人になってからの方が一日の育児時間が減っていること」。子育て中に「家事の筋肉」が鍛えられたという井田さんは、「本当に大変だと思っている育児中の人たちも、今の頑張りが自分のためになると思ってほしい」と話す。

 時間のように、与えられた「枠」の中でやりくりすることは、片づけや家計管理にも通じる。客観視することで改善につなげられるが、その際に忘れてはいけないのが「一番やりたいことは何かということ」。そして、やり残しがあっても「今日はここまででいいと思うことも大切。無理はしないで」とエールを送った。

◆井田さん著書 基本の考え方やこつ紹介

 井田さんは著書「『引き出し1つ』から始まる! 人生を救う片づけ」(主婦と生活社)=写真=で、片づけや収納のほか台所仕事などの家事について、基本となる考え方やこつを紹介。長男が「不良少年」になったのを機に物の整理を始めたことなど、自身についてもつづっている。A5判、127ページ。1296円。

 

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