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<城ヶ島だより>(7) 漁と共に生きる 海の幸の宝庫

神奈川

2018年8月30日

取った伊勢エビを網から外す石橋さん=三浦市で

 満月と灯台の明かりが照らす漆黒の海へ向かって、城ケ島の港を漁船がたつ。「潮の流れが速い。しっかりつかまっていて」。二十六日未明、城ケ島漁協の理事、石橋英樹さん(47)がうねる海面を見つめながら、同乗した記者に声を掛ける。

 八月は伊勢エビ漁の最盛期。所々で別の漁船とすれ違う。「夜行性だから昼間に網を仕掛け、この時間に取る」。石橋さんがローラーで網を巻き上げると、掛かったエビが勢いよく体をよじらせた。

 ヒラメやカワハギなどの魚、アワビとサザエを中心とする貝類、ワカメにヒジキ…。「餌になる海藻が育ついい磯に囲まれた島は、海の幸の宝庫」。島内にある県水産技術センターの利波之徳(となみゆきのり)所長が指摘する。

 自然の恵みを受け、古くから漁と共に生きてきた島民。底が透明になっている「箱メガネ」で船の上から水中をのぞき、棒状の漁具で貝類を挟み採る「みづき漁」や素潜りといった伝統的な漁法も息づいている。

 島に欠かせない漁も、一九六〇年に三浦半島と結ぶ城ケ島大橋が架けられたことで試練にさらされた。島外との距離が縮まり、漁以外に生活の糧を求める人が増えた。「百人以上いた漁協の組合員は三十人弱に減った」(石橋さん)

 なり手不足と高齢化に加え、近年は燃料費の高騰、漁獲量に響く「磯焼け」などの問題が浮上。肉体的にきつく、子どもには継がせない漁師も多い。石橋さんも父が亡くなる十二年前まで、三浦市の水族館「京急油壺マリンパーク」に勤めていた。

 「体はきついけど、やりがいはある。それに、一生サラリーマンで終わるのもね」。朝日を浴びながら船を操る後ろ姿には、島の伝統を守り抜く決意がにじんでいた。 =おわり

 (この連載は福田真悟が担当しました)

<磯焼け> 魚介類の餌になる海藻類がアイゴやムラサキウニなどに食べ尽くされ、生態に影響を与える現象。城ケ島周辺でも発生し、漁協と島のダイビングセンターが協力してアイゴなどの駆除に当たっている。

 

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