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<かわさき市民健康の森>水沢の森(宮前区) 「森人の会」が里山づくり

神奈川

2018年8月4日

「このあたりの低木も、10年後には奥の雑木林とつながります」と説明する水野さん

 長袖と長ズボンを着用し帽子をかぶった人たちが、機械や鎌で草を刈る。七月半ばの日曜日午前九時。日なたの気温は既に三〇度を超し、みな汗だくだ。だが木陰に入ると、驚くほど涼しい。セミとともにウグイスの鳴き声が聞こえてくる。

 川崎市宮前区の市民健康の森「水沢の森」は、地域住民らが集まり二〇〇一年に発足した「水沢森人(もりんど)の会」が維持管理をしている。里山づくりが目的だ。

 四・一ヘクタールの土地に、雑木林や竹林、果樹園などがある。会員らは草刈りなど月一回の定期活動をする。そのほか、畑の手入れをしたり、木々の間伐をしたり…。タケノコ掘りや竹細工教室といったイベントを開き、小学校の環境学習のガイドも担う。

 森は市中央卸売市場北部市場に隣接し、住宅地がそばまで迫る。初代会長の水野憲一さん(84)は「ちっぽけな里山だけど、街のコンクリートの中にあることに価値がある」と話す。

 会の活動記録集によると、水沢地区は一九七〇年代、市道の尻手黒川線と物流基地、公共施設の建設が計画された。その後、市道と、物流基地に代わる北部市場は整備されたが、ほかは計画通りに進まず、農地や樹林が断片的に残された。

 会が活動を始めた当時は「荒れ地で不法投棄のごみもあった」と水野さん。会員らが井戸水を引いて池を造り、子どもたちのまいたドングリから育てたクヌギやコナラを移植した。十年後には既存の雑木林とつながるという。木を植えずに草地のままのエリアもあり「秋にススキの穂がなびくさまは見事」とか。

 会員約百人はシニア世代が中心で、一級建築士、森の植生に詳しい専門家、ロボット製作者など、経歴はさまざま。竹炭用の炭焼き窯を作ったものの、近隣住民から「においが気になる」という指摘を受けて、においを消す再燃焼装置まで開発した人も。水野さんは「高齢者の技能集団」と胸を張る。自身はNHKのディレクターとして、自然番組制作を手がけてきた。

 昔ながらの里山の景観には農地が欠かせないとの考えから、元々あった畑を残した。夏にはキュウリ、ナス、サトイモなどが実を付けるが、市の土地なので、収穫物を売ることはできない。チェーンソーなど機械のメンテナンスや、作業道具を収める小屋の修繕といった活動資金は、民間の助成金でまかなう。

 森の南側は山の尾根に沿って横浜市との市境になっており、多摩川と合流する平瀬川、鶴見川と合流する早渕川、矢上川の三つの川の分水嶺(れい)がある。近くの井戸から森の中の池を通り、北側に抜けた水路の途中には湧き水もある。

 本郷一雄会長(74)は「この辺りは地下水が豊富。水源の森のイメージを確立するために、井戸をもう三本くらい掘りたい」と話す。一本しかない水路が枯れれば、植物や生物の生育に影響が出てしまう。

 「作った自然でも、ないよりまし。これが本質に近いと子どもたちに伝えたい」。本郷さんは間近に迫る住宅地に目をやりながら語った。 (小形佳奈)

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 市内の各地には「市民健康の森」があります。そこでは地域の人たちが、緑豊かな自然を次世代に残そうと、さまざまな取り組みをしています。その姿を取材し、随時掲載します。

<市民健康の森> 緑の保全や市民のコミュニティーづくりを目的に、市が各区に1カ所ずつ整備した。1998年から2001年にかけ、区と区民らでつくる委員会が、地域の特色を生かせるよう場所やコンセプトの検討を重ねて区長に提言。その後、順次開設した。区民による管理運営組織が植栽の管理や観察会などを行っている。

 

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