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茅ケ崎で90歳女性の車暴走、4人死傷 高齢者事故どう防ぐ?

神奈川

2018年6月24日

90歳女性が運転する乗用車(左)が複数の歩行者をはねた現場付近=5月28日、茅ケ崎市で

 茅ケ崎市で五月、横断中の四人が乗用車にはねられ、死傷した。運転していたのは同市の九十歳女性。最近の認知機能検査で問題はなかったが、家族には、いずれ運転免許証を自主返納する意思を伝えていたという。昨年三月施行の改正道交法で高齢ドライバーの安全対策は強化されたものの、事故を未然に防ぐには、家族や周囲の関わりとともに「生活の足」の確保が重要だ。

 事故は五月二十八日に発生。同市の国道で赤信号になったばかりの交差点に乗用車が進入し、横断歩道を渡り始めた四人をはね、五十七歳の女性が死亡、三人が軽傷を負った。県警の調べに、女性は「赤信号と分かっていたが、横断歩道に誰もいないと思い、通過しようとした」と話した。

 「『そろそろ』が長引いてしまった」。女性の息子は事故後の取材に、こう悔やんだ。女性は十年ほど前に膝を痛め、週一〜二回、買い物と通院で車を使用。家族も「近くならば」と運転を許可していた。これまで縁石に乗り上げたことはあるが、大きな事故はなし。昨年十二月の認知機能検査もパスしたため、家族は「そろそろ免許を返す」という本人の言葉をうのみにしていたという。

 一方、鉄道やバスなどの交通機関が発達していない地域では、免許返納後の移動手段がネックとなる。国土交通省は昨年から、過疎地でタクシーや貸し切りバスで荷物を運んだり、貨物車に客を乗せたりする「貨客混載」サービスを可能にし、乗り合いタクシーの普及も支援。各自治体は高齢者のタクシー運賃を補助したり、路線バスと同じルートを走る通院、通学のためのバスを一本化し、効率よく運行したりするなどの工夫を凝らす。

 昨年三月施行の改正道交法では、七十五歳以上の人が免許更新時の検査で「認知症の恐れあり」とされた場合に、医師の診断を義務付けた。検査で問題がなくても、一般的には年齢とともに視力や体力、記憶力、判断力が衰えるが、「自分は大丈夫」と思っている高齢ドライバーは多いようだ。

 所正文(ところまさぶみ)・立正大教授が今年三月にまとめた調査では、高齢者講習と優良講習受講者のうち「運転技術に自信を持っている」と答えた人が八十歳以上の男性で76%、女性で58・3%に上った。年齢とともに割合は上がる傾向にあり、男性が女性を上回った。

 所教授は「運転歴が長く、大きな事故もなかったので、強い自信を持っているようだ」と分析。その上で周囲が返納を促す場合は「頭ごなしに言うのではなく、高齢者の気持ちに寄り添う必要がある。今後どのように買い物や外出ができるかなど具体的な生活を一緒に話し合うとよい」という。大分県などの運転免許センターは看護師や保健師が免許更新時に高齢者や家族の相談に対応し、成果を上げており「こうした取り組みを全国的に広げるべきだ」と話す。

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 国内の交通死亡事故は年々減少しているが、警察庁がまとめた2015年のデータによると、運転免許保有者10万人当たりの死亡事故件数は75歳以上が9.6件で、75歳未満(4.0件)の2倍以上だった。昨年3月施行の改正道交法では75歳以上の人に対し、免許更新時の認知機能検査を強化。各自治体は免許証を自主返納した人が生活に困らないように、代わりの交通手段確保などに力を入れている。

 

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