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<花に舞い踊る>菊 女の一生を「見立て」

伝統芸能

2018年8月31日

長唄「菊」から。村娘を演じる西川喜々=国立大劇場で

 季節の花にちなんだ日本舞踊の作品と、そこに流れる日本の心について紹介するコラム。今回は長唄「菊」です。

 菊は桜や梅と並び日本を代表する花であり、可憐(かれん)な小菊から絢爛(けんらん)と咲く大輪の菊など、花の色や形、大きさなど多種にわたります。本作は女の一生をそうした色とりどりの菊になぞらえ、禿(かむろ)(少女)、町娘、御守殿(ごしゅでん)(武家娘)、村娘といった四種の娘姿で表現しています。まだ恋も知らない少女のあどけない様子から、恋を知りそめた娘の恥じらい、恋の喜びとその反面のほろ苦さ、娘盛りのあでやかさなどが綴(つづ)られています。

 日本舞踊の歴史に大きな足跡を残した舞踊の名手、吾妻流四代目家元初代吾妻徳穂(一九〇九〜九八年)が一九三一(昭和六)年に初演。今日では各流派に普及し、もとは一人で踊り分ける形式だったのを、四人、または二人で役を分ける演出も流行しています。

 最近では、十九日に日本舞踊協会、東京支部「城南ブロック舞踊会」(東京・国立大劇場)で、禿を五條加奈、町娘を若柳杏子(きょうこ)、御守殿を若柳慧子、村娘を西川喜々が演じ、花を競いました。

 女の一生を菊に例えるこの趣向は、「見立て」という日本文化の大事なエッセンス。「見立て」とは物を別の何かに例えることで、古来、和歌や庭園、俳諧、茶の湯など、多くの文芸、芸術の中でさまざまに展開してきました。

 その精神は日本舞踊の作品や振りにも継承され、昭和に生まれた比較的新しいこの曲も「見立て」で彩られ、それぞれの年代の娘を華やかに描写しています。 (舞踊評論家・阿部さとみ)

 

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