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<らくご最前線>三遊亭天どん 古典も自在の「新作派」

伝統芸能

2018年8月10日

 七月十七日、東京・中央区お江戸日本橋亭の「大天どん会」に出掛けた。三遊亭天どんが年四回開いている独演会だ。

 一席目は自身が創作した新作落語「機内にて」。国際線の機内で急病人が発生、居合わせた医師が手当てをする。と、今度はハイジャック。これも医師が犯人を取り押さえた。さらに密室殺人が機内で起こり、またも医師が解決。実はこの医師が「事件に遭いやすい」特異体質だった、という話。「ヒーローあるところに事件あり」という逆転の発想だ。

 二席目も天どん創作の「久しぶり!」。コンビニのレジで働いていると、見知らぬ客が「おまえだろ、懐かしいな! 久しぶり! 俺だよ!」と話し掛けてくる。油田というこの男、店員を「佐村河内」という友人と決めつけて譲らないが、店員の名は田中。だが油田のあまりの押しの強さに、田中は「自分は佐村河内かも」と洗脳されかかる。世の中「押しの強いヤツ」勝ち、という真理をデフォルメした傑作だ。

 三席目は古典の名作「船徳」。船は嫌だと言う連れの男を船好きの男が強引に誘い、未熟な若旦那の操る船に乗ってひどい目に遭う。天どんの演出では、どんなひどい目に遭っても船好きの男が「船はこういうものなんだ」と連れを言いくるめようと頑張るのが楽しい。若旦那の「自分が大好き」なうっとうしいキャラも天どんならでは。

 船から下りて自力で大桟橋に着いた二人。船好きの男の「今だから言うけどあの船頭ダメ!」という告白に、連れが「なんかいい船に乗ってみたくなったなあ」と応じる皮肉な展開も秀逸だ。

 新作派と見られがちだが実は古典も豊富なネタ数を持つ。真打ち五年目、寄席のトリを務めることも増えた。順調に存在感を高めている個性派だ。(広瀬和生=落語評論家)

 

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