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<評>工作芸人・できたくん 手ごわい注文上手にさばく

伝統芸能

2018年8月3日

 下書きなしで発泡スチロールの板で切り絵を作る発泡スチロール芸は紙切り芸の変化形と言える。できたくんはハッポゥくんと名乗っていたが、さまざまな素材の工作芸に取り組もうと五月に改名した。また落語芸術協会入会を前提に寄席への出演も始めた。

 浅草演芸ホール・七月余一会昼席「四派競演会」(七月三十一日)にも落語の合間の色物として出演した。まずキリンを切る。この時、軽快な音楽に乗せて右足を前後に動かして調子を取る。座り高座の紙切りはじっとしたままだと舞台が地味になるため体をゆらしながら紙を切る。できたくんも同じ理由だが、音楽が小気味よいので退屈しない。あっという間にデッサン力の高さを示す作品を仕上げた。

 次は二枚の板を重ねて切り、それを開いてアンパンマンを完成させる。その後は客席から注文を取る。ここで寄席の観客の洗礼を受けた。「エンジェル」と声が飛ぶ。「天使ですね」と確かめて空を飛ぶ天使を作る。構図の巧みさと絵の細かさに大きな拍手が起きた。

 続いて「マッターホルン」という注文。独特な山の形が描けるかという意図が見える。「スイスの山ですね」と確認して作画に入る。徳川家と武田家の家紋を立て続けに注文されて苦しんだ思い出を話しながら作り上げたのがスイスを目立たせた地球。スイスには高い山がそびえている。意表を突く構図に客席から感嘆の声が上がった。手ごわい注文を上手にかわして場を盛り上げる手腕は見事だ。 (布目英一=演芸評論家)

 

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