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片岡亀蔵、自在の脇役 「これからも地道に」来年襲名50年

伝統芸能

2018年7月27日

 ギョロリとした目に、野太い声。三枚目から悪役までこなす歌舞伎俳優の片岡亀蔵(56)が、名脇役として強烈な存在感を放っている。東京・歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」では、三部制の公演に三部とも出演。亀蔵は「8月は働いて働いて、食べて食べて…」と晴れやかに意気込みを語る。 (安田信博)

 上方落語を題材にした昨年暮れの歌舞伎座公演「らくだ」。亀蔵はフグにあたって急死した遊び人役で客席を爆笑の渦に包んだ。せりふが一切なく、かつがれたまま踊りも踊らされる死体役をコミカルに演じ、芸達者ぶりを見せつけた。一九九二年から通算五回目となる当たり役。死体をかつぐ市川中車とのコンビも絶妙だった。

 八月公演の第一部(午前十一時開演)の新作「心中月夜星野屋(しんじゅうつきよのほしのや)」は、男女のだまし合いを軽妙に描いた落語「星野屋」が原作。水茶屋の若衆役で、商家の旦那役の中車と共演する。実姉の夫が落語家の春風亭一朝という縁で、寄席によく足を運ぶという亀蔵は「中車さんには普通でない感じの面白さがある」と評し「落語と歌舞伎は相性がいい。どこまで(面白く)膨らませられるかがカギ」と語る。

 五代目片岡市蔵の次男に生まれた。歌舞伎の道に進むも、二十代前半は「独特の上下関係」に合点がいかず、スナックのマスターとして働いた時期がある。「ちょっと突っ張っていたんでしょうね」。父の説得もあり約三年で復帰したが、師事した初代尾上辰之助(三代目松緑追贈)が一九八七年、四十歳の若さで病死。その四年後には父も不慮の事故で亡くし「何も先が見えない状況」に見舞われたという。

 そんな折、十八代目中村勘三郎に救われたという。従来の枠を超えた斬新な舞台として九四年に始まった「コクーン歌舞伎」で、亀蔵はアクの強い憎々しさと愛嬌(あいきょう)を発揮し、主役を引き立てる脇役として知名度と存在感を高めていった。

 八月公演では第二部(午後三時開演)の喜劇「東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)」と、第三部の通し狂言「盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)」に出演する。「以前は(一日に)四本、五本出ていた年もあった。体はしんどいが、力になった」と明かす。来年十一月で襲名五十年。「長くなりましたねえ…。これからもコツコツ地道にやっていくだけです」と気負いはない。

 「八月納涼歌舞伎」は9〜27日。第一部は他に「花魁草(おいらんそう)」と「龍虎(りゅうこ)」、第二部は他に「雨乞其角(あまごいきかく)」。チケットホン松竹=(電)03・6745・0888。

<かたおか・かめぞう> 1961年9月、東京都生まれ。65年12月、本名の片岡二郎のまま「忠臣蔵」の天川屋義平の一子・由松役で初舞台。69年11月の歌舞伎座公演で四代目片岡亀蔵を襲名。兄は六代目片岡市蔵。屋号は松島屋。

 

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