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<お道具箱 万華鏡>歌舞伎の幕 舞台転換で活躍

伝統芸能

2018年7月27日

(上)定式幕。「両幕外」では、上手と下手で幕を内側に引き込む(下)浅葱幕。上辺が切り離され、すとんと幕が下に落ちる仕掛けになっている=いずれも歌舞伎座舞台提供

 歌舞伎は、幕も演技をする。芝居のはじめと終わりだけでなく、演出の道具として、さりげなく芝居に関わってくる。歌舞伎座にも、多くの幕が用意されていて、いろいろな使われ方をしている。

 必ず目にするのは、三色縦縞(たてじま)の「定式(じょうしき)幕」。客席と舞台を区切る幕で、横方向に開く。「定式」は、歌舞伎でよく使われる言葉で、「いつもの・定番の」という意味がある。

 定式幕は、人の手で引っ張って開閉する。歌舞伎座は間口が広く約二十八メートルある。その分、幕も長く布地もぶ厚いため、とても重い。腕っぷしが強くないと、この幕を自在に扱うことはできない。このため大道具担当者が開閉をする。芝居の雰囲気に合わせて、速度も調整しながら幕を引いている。

 定式幕も演出的な使い方をすることがある。幕をいったん閉めた後、少しだけ幕を内側に引いて、舞台にスペースをつくる。これを「幕外(まくそと)」という。実はまだ芝居が続いていて、俳優は演技をしている。背景がシンプルになることで、俳優にぐっと目が引きつけられて、スポットライトのような効果を生む。

 次に活躍頻度の多い幕は、「浅葱(あさぎ)幕」。この幕には定番の使い方がある。お芝居の最中に、天井から幕をぱっと垂らして、舞台を隠す。その間に裏で舞台転換。完了したら、幕の上辺を切り離して床にばさっと落とし、次のセットを一瞬で観客に見せるのだ。舞台転換の待ち時間が楽しいアクセントになるという歌舞伎の知恵。この一連の流れも大道具担当者の仕事である。

 九月に歌舞伎座で上演される「俊寛(しゅんかん)」では、定式幕が開いたとたんに、この浅葱幕が現れる。ぜひ幕にもご注目を。 (伝統芸能の道具ラボ主宰・田村民子)

 

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