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<らくご最前線>笑福亭たま 一期一会のライブ感

伝統芸能

2018年7月13日

 上方落語の若手のホープ、笑福亭たま。古典と新作両方に才を発揮する爆笑派で、早くから積極的に東京に進出、この春には国立演芸場で二〇一七年度の花形演芸大賞を受賞している。六月二十一日、東京都中央区で開かれた「芸歴二十周年記念 笑福亭たま日本橋劇場独演会」を見た。

 一席目は「猫怪談」。三遊亭円生の口演で知られる東京の演目で、与太郎が亡くなった養父を早おけに入れて寺へ運んでいく途中、化け猫の妖気で死体が動きだし、風に乗って飛んでいってしまう噺(はなし)。たまは与太郎を喜六として、これを上方落語に仕立てた。

 円生の「猫怪談」は人情噺がかった演出が特徴的だったが、たま版は喜六の父の死体が歌い踊る、あくまで陽気なドタバタ劇。「死体をまったく怖がらない喜六」と「おびえる同道の男」という対比のおかしさに焦点を絞った演出が秀逸だ。

 二席目は上方落語の名作「胴乱の幸助」。けんかの仲裁が道楽という男が主役の噺で、通常三十分以上かかるが、たまは二十分に凝縮して飽きさせない。それでも何かがカットされた気がしないのは、噺の本質を見事に捉え再構築しているからだ。

 三席目は、ショート落語(オリジナル小咄(こばなし))四編に続いて新作落語「ニコニコクリーニング」。クリーニング店を舞台にしたコントのような構成の中で店長が披露する「人はなぜ笑うか」の分析が実に面白い。

 たまの独演会は一期一会のライブ感が際立つ。マクラの面白さもその一つで、「猫怪談」の前に「落語会で携帯が鳴ること」について延々と語って爆笑させ、さらにこの日は「三味線二本と和太鼓をバックにロックの替え歌を歌う」というスペシャルなイベントもあった。

 十月から東京での独演会を月例にするという。芸歴二十年、大いなる飛躍を予感させる注目株だ。

 (広瀬和生=落語評論家)

 

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