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右近、多彩な語り カブキ・チューン NHKFM

伝統芸能

2018年7月13日

 坂東玉三郎に市川染五郎、尾上松也…。四十年近くにわたり、そうそうたる歌舞伎俳優がパーソナリティーを務めてきたラジオの長寿番組がNHKFMで続いている。四月からは番組名を「カブキ・チューン」(金曜午前十一時、再放送・土曜午前五時)に一新、新たに尾上右近(26)を抜てきした。スター役者への登竜門の色彩も帯びつつある番組。右近は「リスナーに楽しんでもらうには、僕自身が楽しみ、成長していく姿を届けることが大事」と意気込む。 (安田信博)

 番組は一九七六年四月、「邦楽ジョッキー」の名前でNHKラジオ第一放送で始まった。三年間の休止を経て、八五年にFMに移り、これまで十二人の歌舞伎俳優が担当。右近は中村隼人から引き継いだ。

 右近が担当して三カ月余。明るく歯切れのいい語りで、プライベートも率直に明かす姿勢に、リスナーの反応は上々という。本名の岡村研佑(けんすけ)にちなみ「ケンケン」の愛称で親しまれ、質問や激励の手紙、メールは増加の一途。「年齢層も幅広く、何よりの励みになっている」と笑顔を見せる。

 人気コーナーの一つが、素朴な疑問を解消する「問答」。例えば歌舞伎役者を「〇〇のおじさん」「××のおにいさん」と呼ぶ歌舞伎界独特の言葉遣いへの質問に、右近は「僕は、父より年上の方はおじさん、年下の方はおにいさんと呼んでいる」と答え、リスナーを納得させている。

 歌舞伎の魅力をカジュアルに伝える番組とあって、長唄や清元(きよもと)など多様な楽曲や、箏や尺八など奏者の紹介も欠かせない。豊富な知識に加え、分かりやすい解説も必要だ。例えば、清元の名作「鳥羽絵」を流した際は「漫画をそのまま踊りにしたような、しゃれっ気のある曲。歌詞は“歌う落語”のよう」と巧みな比喩を交え解説した。

 歌舞伎俳優として注目される右近だが、今年二月には歌舞伎の伴奏音楽にも用いられる清元節(きよもとぶし)の名跡「清元栄寿太夫(えいじゅだゆう)」の七代目を襲名。邦楽の才能もさっそく生かされている。

 歌舞伎の公演で東京を長く離れるときは、大量の書籍を宿泊先に送り“にわか書斎”をしつらえるほどの読書好き。さまざまなジャンルへの好奇心もラジオのトークに厚みを持たせている。歌舞伎の名せりふの実演など「地声との違い」も実感できる趣向も凝らされ、いずれは清元の演奏も披露する予定という。

 番組担当者は「毎回新たな引き出しを持って収録に臨んでいる。自身の考えやこだわりを丁寧に伝え、何事にも前向きな姿勢が伝わってくる」と評価する。

<おのえ・うこん> 1992年5月生まれ。江戸浄瑠璃清元宗家七代目清元延寿太夫(えんじゅだゆう)の次男。曽祖父の六代目尾上菊五郎にあこがれ、2000年4月に歌舞伎座で初舞台。立役(たちやく)、女形のいずれもこなす若手成長株。17年のスーパー歌舞伎II「ワンピース」では、けがで降板した主演市川猿之助の代役をつとめ、一躍脚光を浴びた。

 現在、東京・紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYAで上演中の舞台「WATER by the SPOONFUL」に主演し、現代劇に初挑戦中。

 

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