XMenu

海老蔵、父子で魅了す 歌舞伎座7月公演

伝統芸能

2018年6月29日

 東京・歌舞伎座の七月公演で、市川海老蔵が昼と夜の部の双方で成田屋(市川団十郎家)ゆかりの演目にフル出演し、二度の宙乗りを披露する。特に夜の部では、役者の動きに合わせて映像を投影する最先端技術を駆使した演出を初披露。「みなさんの度肝を抜くような舞台を届けたい」と意気込む。長男の堀越勸玄(かんげん)君(5つ)も初の昼夜出演で、父子そろって奮闘する。 (安田信博)

 昼の部(午前十一時開演)の「三國無雙瓢箪久(さんごくむそうひさごのめでたや) 出世太閤記」は、農民から天下人となる豊臣秀吉の物語。とりわけ、最終盤の「大徳寺焼香の場」には思いも格別だ。「大徳寺」として単独上演された一九五三年の歌舞伎座公演で、海老蔵の祖父十一代目団十郎が秀吉をつとめ、父十二代目団十郎が三法師(さんぼうし)(織田信長の孫)で初舞台を踏んだ。六十五年を経て、今回は海老蔵が秀吉、勸玄君が三法師と、それぞれの祖父がつとめた役に挑む。

 昨年のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」では信長役で抜群の存在感を示した海老蔵。今回の秀吉役については「自分とはかなりかけ離れた人物で、自分にないものを持っている。四十歳になり、可能性をもう少し広げていきたいとの思いから挑戦することにした」と明かす。

 夜の部(午後四時半開演)の「源氏物語」では、海老蔵が光源氏と桐壺帝(きりつぼてい)、龍王(りゅうおう)の三役を、勸玄君が光源氏の幼少期の「光の君」をつとめる。

 五一年三月の歌舞伎座公演で、十一代目団十郎が「光の君」をつとめ初めて歌舞伎化された。以来、さまざまな脚色が加えられてきたが、今回はオペラと能楽、華道とプロジェクションマッピングによる映像表現を採り入れる。

 五歳のとき「源氏物語」の春宮で初お目見得(めみえ)を果たし、作品への愛着が強いという海老蔵は、舞台を重ねるにつれ「(満たされない思いを抱く)光の君の孤独感を表現することが大切。歌舞伎の様式だけでは実現が難しいと感じるようになった」と明かす。

 異なる芸術文化との融合により「紫式部が作品を書いた平安時代にタイムスリップしたような世界観」を舞台上に表現するという。歌舞伎役者と能楽師、オペラ歌手が伝統ある舞台で共演する新機軸。海老蔵は「戦後の歌舞伎界は少しおとなしくなり、パッション(情熱)が減っているように感じる。賛否両論を起こすことが大事。それが歌舞伎の活性化につながる」と信念を語る。

 愛妻の小林麻央さん(享年三十四)を病で失って一年余り。「そう簡単に立ち直れるものではない。今だからこそ悲しいと思うことがいっぱいある」。海老蔵と勸玄君は悲しみを内に秘めて舞台に立つ。

 公演は来月五〜二十九日。十一、十七両日の夜の部と、十八、十九両日の昼の部は休演。七日昼の部は貸し切り。チケットホン松竹=(電)03・6745・0888。

 

この記事を印刷する