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<新かぶき彩時記>近松作 スペクタクル満載 隅田川物の走り「雙生」

伝統芸能

2017年4月21日

 京都の吉田家の子供・梅若丸がさらわれた伝説をネタ元にした芝居の総称が「隅田川物」。その走りとなった作品が「雙生(ふたご)隅田川」。作者は近松門左衛門で、一七二〇年に初演されました。

 梅若の兄弟・松若丸と人買いの忍ぶの惣太も登場し、元・吉田家の家臣の惣太が、それとは知らず梅若丸を殺して悔やむという、隅田川物の基本パターンを作りました。後世の作品にはあまり登場しない母・班女御前が狂乱する経緯も描かれ、隅田川をさまよう場面は、大正期に作られた舞踊「隅田川」とよく似ています。

 天狗(てんぐ)のたたりで吉田家の当主が横死し、家宝の掛け軸がからんで梅若が出奔、梅若を手にかけた惣太が自らを犠牲にして変身した「七郎天狗」が松若とお家を救うスペクタクル性の高い内容です。市川猿之助ゆかりの演目集「三代猿之助四十八撰(せん)」のひとつで、一九七六(昭和五十一)年に三代目猿之助(現二代目猿翁(えんおう))が二百六十年ぶりに復活上演しました。

 八五(昭和六十)年には、当時九歳だった亀治郎(現四代目猿之助)が梅若と松若二役を演じ、三代目猿之助、菊五郎と演じた三人宙乗りが話題となりました。今年一月の市川右團次襲名披露公演では、四代目猿之助が班女御前で出演、宙乗りにも華を添えました。 (イラストレーター・辻和子)

 

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