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民主化の光 求めて チャン・ジュナン監督 映画「1987、ある闘いの真実」

放送芸能

2018年9月6日 朝刊

 三十一年前に軍事政権を倒した韓国の民主化闘争を描いた映画「1987、ある闘いの真実」が八日、公開される。李明博(イミョンバク)、朴槿恵(パククネ)ら歴代大統領の相次ぐ疑惑で政治不信が高まる韓国。今春には民主化勢力を弾圧した一九八〇年の光州事件を扱う「タクシー運転手 約束は海を越えて」が公開された。なぜ今、民主化のために血が流れた八〇年代なのか? 「1987」のチャン・ジュナン監督(48)は「悲しいけど美しかった時代を見てもらいたかった」と話す。 (浜口武司)

 韓国で大統領の直接選挙や言論の自由が実現したのは、ソウル五輪を翌年に控えた八七年。軍部出身の全斗煥(チョンドゥファン)大統領は「漢江(ハンガン)の奇跡」と呼ばれる経済成長を遂げた一方で、集会や表現、出版の自由を厳しく制限。本作は独裁政権に対し、民主化を求めた学生や市民の奮闘を描く。

 「八七年の民主化闘争は八〇年の光州事件に対する憤りや悲しみが凝縮して起きた。だけど光州事件を扱った小説や映画はたくさんあるのに、八七年を描いた作品はない。当時を知らない若い人たちに伝えたかった」とチャン監督は話す。

 物語は、警察の拷問でソウル大生が死亡した八七年一月に始まり、民主化運動が激化する「六月民主抗争」の前夜まで続く。

 チャン監督は歴史に忠実に作ることを心掛けたという。「民主化の過程で犠牲になった人の遺族や実際に戦った人たちが今もいる。だからファクト(事実)には手を加えなかった」と明かす。

 主な登場人物の中で唯一、架空のキャラクターである女子大生ヨニに、監督は大きな役割を託した。音楽とファッションにしか興味のなかったヨニが民主化を求める人たちに感化され、徐々に変わり、自らの足で立ち上がる。「当時は軍事政権に葛藤しながら暮らしていた普通の人々がたくさんいた。ヨニはそうした人々の代弁者なのです」と説明する。

 昨年失脚した朴前大統領への捜査で、政府に好ましくない人物をリストアップした「ブラックリスト」の存在が明るみに出て、チャン監督の名前もそこにあった。「歴代政権が文化人に圧力をかけコントロールしようとしていたことはみんな感じていた。そして逆らうと不利益を被ることも。それでも出演してくれた俳優やスタッフに感謝したい」

 李、朴両政権を通して、チャン監督は再び独裁に戻ろうとするかのような状況を感じていたという。それに抵抗するように「タクシー運転手」や本作が作られ、韓国で高く評価された。「撮影中の二〇一六〜一七年にろうそくデモが起き、朴政権が倒れ、私たちに追い風が吹いた。歴史の風に乗った作品です」と自信を見せる。

 

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