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感情揺さぶる鮮烈ラブストーリー 映画「寝ても覚めても」

放送芸能

2018年8月30日 朝刊

 今年のカンヌ国際映画祭でコンペティション部門に出品された映画「寝ても覚めても」が9月1日、公開される。カンヌでは「見たことのないラブストーリー」などと評価された。浜口竜介監督(39)は「新境地の作品で、まさかコンペに選ばれるとは思っていなかった。自分の分岐点になるのだろうな」と話す。 (猪飼なつみ)

 芥川賞作家の柴崎友香の同名小説を映画化。東京のカフェで働く朝子(唐田えりか)は、コーヒーを届けた先で出会った亮平(東出昌大)に衝撃を受ける。亮平は、かつての恋人の麦(ばく)(東出・二役)とそっくりだった。戸惑いながらも亮平に引かれ仲を深めるが…。

 柴崎の小説が好きだという浜口監督は原作について「物語が進むたびに、朝子の行動に『こんな人だったのか』と毎回驚かされ、自分はこのキャラクターを何も分かっていなかったと思い知らされてとても面白かった。だから観客を驚かせ、何か感情を揺さぶることができると思った」と語る。

 原作は東日本大震災前年の二〇一〇年に発表されたが、脚本も手掛けた浜口監督は、恋愛物語の重要な部分で震災発生時や被災地の状況を取り入れている。

 「原作にも例えば9・11(〇一年の米中枢同時テロ)など社会の流れが描かれていたから、震災は絶対に入れようと思っていた」。震災時、東京にいた浜口監督は当時の不安感や、電車が止まって家に帰ることができずに見知らぬ人たちと声を掛け合った経験を、東京にいる朝子と亮平に反映させた。

 浜口監督は日常を一変させた震災と被災者の人生を知りたくて、ドキュメンタリー映画「なみのおと」(一一年)など三部作を製作している。「僕らは昨日も今日も明日も同じような日が来ると思っているけれど、ある日突然断ち切られることがある。それが震災の場合もあるし、恋愛のように相手の行動によって起こることも。だから、実は似たようなテーマを扱っているんじゃないかと思った」

 本作で朝子と亮平の日常を積み重ねて映した上で、時にその日常を破壊するような暴力性もある恋愛の難しさを描いた。

 初の商業映画ながらコンペティション部門に選出され、カンヌに赴いた。「テレビで見た光景の中にいて、ふわふわした気持ちだった。あそこにいると、もしかしたら授賞式で呼ばれるのかな…という気持ちにならなかったわけではないけれど、まだそこまでの自信はありませんね」と笑顔を見せる。「鮮烈な恋愛物語なので、恋をしたことがあるすべての人に見てほしい」とアピールした。

 

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